近年の文化心理学領域の研究から、日本文化においては他者との協調性を重視する傾向が強いことが明らかになってきた。糖尿病は、日常生活の中で食事や運動のような生活習慣の管理が必要となり、またそれを継続することが治療に欠かせないという点で特殊な疾患である。そのような生活習慣の影響の大きい疾患においては、協調性を重視する文化が療養に影響を与え、その結果、治療の成否を左右している可能性が高い。そのような場合には、この点を理解した支援や指導が重要となる。すなわち、協調性の高さによる阻害要因を軽減し、促進要因を積極的に活用する療養支援が求められる。本研究では、そのような文化的背景を踏まえた、協調的支援の効果を検証するため、療養支援アプリケーションのプロトタイプを作成し、研究者間で試用した。しかしながら、忙しい日常の中で患者が負担なく使用できるレベルのアプリケーションを実現するためには、少ない操作でかつ継続する利点を明確に感じる内容である必要がある。実際に患者の療養支援に活用できるアプリケーションとなるためには、ユーザーインターフェースも含め、さらなる質の向上が求められると判断した。 療養支援のためのアプリケーションの改良に資するため、外来通院中の糖尿病患者を対象に療養に関する質的研究を実施した。患者にとっての問題点や療養の工夫、支援に求めることなどについて、検討した。これらのことを踏まえ、療養支援アプリケーションの内容を向上させ、これによる効果を検証する研究につなげる。
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