本研究は、精神科看護スキルがどのようなプロセスを経て熟練形成されるのかについて明らかにし、精神科看護スキルの継承に寄与することを目的とし、精神科に従事する新人・中堅・熟練看護師を対象に以下の3段階で研究するものである。 研究Ⅰでは文献検討の結果をもとに、精神科看護スキルの理解度と実施度を尋ねる質問紙調査を行い、精神科看護スキルを把握する。研究Ⅱでは、新人・中堅・熟練看護師それぞれに半構成的インタビューを行い、精神科看護師が有しているスキルとその熟練形成のプロセスを明確にする。研究Ⅲでは、新人・中堅・熟練看護師から構成されるグループにインタビューを行い、困難な臨床場面の検討を通じて、熟練看護師の有しているスキルが次世代の看護師にどのように継承されているのか、その契機を分析し、新人・中堅・熟練看護師が獲得した実践知の継承可能性を検証する。 現在まで、筆者が作成した質問票に基づき、精神科に従事する看護師に精神科看護スキルの理解度と実施度を尋ねるアンケート調査を行った。対象者は、長野県内の精神科病院および病棟に勤務する精神科看護師である。データ収集は、長野県の精神科病院および精神科病棟の承諾が得られた施設に、協力可能な人数を確認してアンケート用紙を送付した。看護管理者を介して質問紙を対象者に配布し、回収した。経験年数をもとに新人・中堅・熟練看護師それぞれが習熟している精神科看護スキルを整理した。研究Ⅱに向けて、新人・中堅・熟練看護師それぞれに半構成的インタビューを行う予定であったが、昨今のコロナ禍において医療施設へデータ収集に赴くことができず、予定した研究計画をすべて実行することはできなかった。
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