研究課題
我が国における統合失調症患者の平均在院日数は、500日以上で推移しており、精神疾患の中でも長期入院患者が多い疾患である。統合失調症患者の多くに睡眠障害があり、睡眠・覚醒リズムやメラトニン分泌リズムに乱れがあると言われている。さらに、統合失調症患者の睡眠と症状は関連することが明らかになっており、不眠が症状再燃のサインになる患者も少なくない。不眠には薬物療法が用いられることが多いが、環境調整によって不眠を改善することも可能である。そのため、精神科において睡眠への看護介入は、重要な看護ケアの一つと言える。しかし、慢性期統合失調症患者に顕著にみられる陰性症状により、意欲の低下、活動の低下が見られ、睡眠・覚醒リズムを整えることは容易ではない。そのため、本研究では、慢性期統合失調症患者の活動に焦点を当てた睡眠ケアシステムの構築を目的としている。先行研究では、慢性期統合失調症患者の睡眠と活動に関連があるのかを検討し、歩数は、睡眠効率および総睡眠時間と有意な正の関連が、また中途覚醒時間と有意な負の相関関係があることが明らかになった。身体活動の多い統合失調症患者は客観的睡眠指標が良好であり、身体活動を高めることが睡眠の改善に結びつく可能性が示唆された。しかし、陰性症状の強い統合失調症患者の身体活動を高めることは容易ではない。そこで、本研究では、身体活動の中でも座位行動(座位bout数:30分以上継続する座位行動のバウト数)に着目し、慢性期統合失調症患者の座位行動と睡眠に関連があるのかを検討した。結果、座位bout数は、睡眠効率との間に有意な負の関連、中途覚醒時間との間に正の関連が認められた。座位行動の少ない統合失調症患者は客観的睡眠指標が良好であり、座位行動を減少させることが睡眠の改善に結びつく可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
2019年9月に国際学会で発表した研究を英語論文で投稿予定であり、2020年度に介入研究を実施し、最終的に睡眠ケアシステムを構築し、論文投稿を行う予定である。
新型コロナウィルス感染症の影響で、病棟での介入研究の実施が可能かどうか不透明であるが、早ければ8~9月、遅ければ10~11月に複数施設で介入研究を実施し、12月に解析、1~3月に論文作成、投稿する予定である。
国際学会への参加人数が2名から1名になったため次年度使用額が生じたが、今年度、介入研究実施に向けて機器購入と英語論文を2本投稿するためのネイティブチェックに使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
日本看護科学会誌
巻: 39 ページ: 68-73
https://doi.org/10.5630/jans.39.68