本研究は、がん薬物療法におけるエマージェンシー発症に関わるケアモデルの開発を目的としている。 まず文献が少なく検討ができない状況にあったため、米国のがん専門病院(Seatle Cancer Care Alliance)、ワシントン大学、YMCA(がん専門病院と共同開発したセルフケアプログラムの見学)に赴き、海外視察をした。またがん専門看護師(OCNS)とフィジシャンアシスタント(PA)にヒアリングを行い、薬物療法時の急変に関連したケアは、①初回治療開始時の面談(セルフケア能力、サポート体制、エマージェンシー発症のリスク)、②エマージェンシーを予防するためのセルフケア教育(集団と個別)、③急変時のクリティカルケアであることが明らかになった。 次に、関東のがん拠点病院1施設にて、救急外来に所属する看護師3名、外来化学療法室に所属する看護師3名に面接を行い質的帰納的研究を行った。救急の看護師からは、ケアの評価が難しく手ごたえを得にくいこと、薬物治療中のがん患者のアセスメントの視点や家族ケアを学習する機会の少なさなどが明らかになった。外来化学療法室の看護師からは、患者の救急受診行動の話を聞きながら、セルフケア行動と関連させて捉えていることが明らかになった。 それらの結果をもとに、がん薬物療法を行っている患者が通常ケアを受ける外来化学療法室における①エマージェンシー発症に特化した患者とその家族が活用できるセルフケアパンフレットの見直しと洗練、②看護師用テキストの見直しと洗練、エマージェンシー発症時のケアを行う救急看護師における③エマージェンシー発症時の本人・家族への対応の資料作成、④外来化学療法室看護師との勉強会などの実施に向けて内容の洗練を行った。
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