研究課題/領域番号 |
18K17539
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研究機関 | 大阪医科薬科大学 |
研究代表者 |
大橋 尚弘 大阪医科薬科大学, 看護学部, 助教 (40646379)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 腎移植 / 腎移植レシピエント / セルフマネジメント |
研究実績の概要 |
腎移植後レシピエント(以下、レシピエント)のセルフマネジメントの現状について報告している先行研究をレビューし、その結果をもとに「レシピエントのセルフマネジメント行動評価ツール(案)」を作成した。また、修正デルファイ法を用い、評価ツール(案)の内容妥当性について検証した。 具体的には、レシピエントの服薬、身体的側面、心理社会的側面のセルフマネジメントの現状と課題に関する知見を整理した。その後、その結果を基礎資料として腎移植後レシピエントのセルフマネジメント行動評価ツール(案)を作成した。次に、修正デルファイ法を用い、レシピエントのフォローアップに精通した専門家を対象に、レシピエントのセルフマネジメント行動の評価項目に関する調査を行った。専門家からのコンセンサスの評価内容は中央値、四分位範囲、四分位範囲率、I-CVIを算出して分析した。 結果、「服薬」、「運動」、「水分・栄養」、「疾患・症状の予防と管理」、「心理社会的適応」の5領域からなる評価ツール案を作成し、3ラウンド(質問紙調査3回、ミーティング調査1回)の修正デルファイ調査を行った。調査の結果、41項目の適切性および妥当性が「中央値7点以上、IQR1以下、IQR80%以上」または「各協力者による評価の最小値が7以上」のコンセンサス基準を満たした。また、そのうち25項目のI-CVIは1.0、16項目のI-CVIは0.80以上であり、「I-CVI≧0.80」のコンセンサス基準を満たした。結果として、実施程度の低さが報告されている「口腔粘膜を損傷しないような歯磨き」や「定期的な歯科受診」、支援が不十分になりがちな心理社会的適応領域のセルフマネジメントの項目を含む、41項目について専門家のコンセンサスが得られ、内容妥当性が適切であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、病院や対象者への調査依頼が困難な状況にあった。
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今後の研究の推進方策 |
本評価ツールの各項目は、レシピエントの服薬、身体的側面、心理社会的側面のセルフマネジメントの現状と課題に関する先行研究の知見をもとにして構成されている。また、各項目の適切性、妥当性は、レシピエントのフォローアップに精通した本邦の専門家のコンセンサスを得ることで確認されている。 しかし、評価ツールの各項目に回答するのはレシピエント自身であるため、彼らにとって適切かつ容易に回答できる項目でなければならない。レシピエントにとって理解しづらい表現や誤解を招く表現があった場合には、正確な回答がなされない可能性がある。本評価ツールを有効なものとするため、今後はレシピエントを対象とした調査を行い、各項目の表現や内容の修正を検討していく必要がある。 また、本研究では評価ツールの信頼性、すなわち内的整合性や安定性についての検証は行えていない。今後はこれらの検証を行い、レシピエントのセルフマネジメント行動を正当に評価できるツールの開発を目指す。 また、現在、「レシピエントのセルフマネジメント行動評価ツール」とともに、「レシピエントのセルフマネジメントの障壁となる因子を評価するツール(仮)」の作成も完了している。海外誌への投稿準備を進めるとともに、このツールについてもレシピエントを対象とした調査を行い、項目の表現や内容を修正する。また、同時に内的整合性や安定性についての検証を行い、これについての論文も作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの流行に伴い、海外の学会に渡航する機会がなくなった。また、研究の進捗の遅延により、発表予定の論文の英文校正費用や腎移植レシピエントを対象とした調査の費用を次年度に繰り越すこととなった。 次年度は新型コロナウイルス感染症が落ち着けば海外の学会での発表を検討するとともに、遅延している論文の英文校正や、調査を進めるために研究費を使用する予定である。
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