研究課題/領域番号 |
18K17541
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研究機関 | 関西福祉大学 |
研究代表者 |
高岡 宏一 関西福祉大学, 看護学部, 助教 (70781699)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | トリアージ / 看護師教育 / 臨床判断 / 救急看護 / 救命救急センター / 特定看護師 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は熟練看護師が行うEmergency Severity Index(ESI)を用いた緊急度判定精度とその有効性を教育介入研究(RCT)で検証することである。ESIはわが国の救急臨床で運用されている現行の判定基準よりも患者の診察待機時間を減少させる効果が期待できる。 当該年度(2019年度)は研究実施計画に沿って、一次介入で得られた研究成果から二次介入として研究対象者への教育介入を実施した。本研究の対象である熟練トリアージナースは、救急臨床で看護業務に従事している。そのため、研究介入の期間を流動的に調整し、メーリングリストなどを活用することで研究対象者の確保を工夫した。 本介入では、研究目的に合致し同意の得られた熟練トリアージナース23名が対象となった。具体的な教育介入の流れとしては、対象者をESI 群とJTAS 群へ無作為割付し、各群のツールに応じた介入を行なった後、共通の模擬患者課題確認試験を実施した。判定基準としては、それぞれの群で偶然によらない順序付けを考慮した評価者間一致の指標であるWeighted Kappa で分析を実施し、緊急度判定精度を比較した。さらに、両群のアンダー/オーバートリアージ率、医療リソースの予測精度、判定時間を比較検証した。 教育介入の結果としては、ESIは現行のJTASと比較して、評価者間一致が優れていること、特に判定に難渋するレベルⅡの基準での判定精度が優れていること、アンダー/オーバートリアージ率が低いことが明らかになった。つまり、熟練トリアージナースが運用するESIは再現性を担保し、より標準化された緊急度判定が可能となることが明らになった。また、ESIは幅広いトリアージナースを対象に運用可能であり、トリアージツールの普及に貢献できることが示唆された。 研究成果は、救急看護関連学会である第21回日本救急看護学術集会で口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題の進捗状況は当初の研究計画と比較して遅れている。 初年度(2018年度)は所属機関での倫理委員会の承認を得た上で、一次教育介入を実施した。本研究は看護師を対象とした臨床試験であるため、公開データベースである大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)に登録した。同意の得られた看護師に対して、緊急度判定の一致度、使い易さ、判定時間、検査・処置の予測精度について検証した。その結果、中堅看護師を対象とした結果と同様に、ESIは高い評価者間一致を示し、特に緊急度の高い患者への感度が優れていることが示唆された。 2019年度は研究実施計画に沿って、一次介入で得られた研究成果から二次介入として研究対象者への教育介入をRCTで検証した。本研究の対象である熟練トリアージナースは、救急臨床で看護業務に従事している。そのため、研究介入の時間・環境の調整が難航し、データ収集に予定よりも多くの時間を要した。その対策として、研究対象者との打ち合わせを綿密に実施し、日程等を調整することで流動的に対応した。さらに、研究対象者となる熟練トリアージナースの募集方法として、救急関連の認定・専門看護師が閲覧可能なメーリングリストに研究参加者の募集連絡を投稿した。 RCTでの判定精度の比較結果から、ESIは現行のJTASに比して、評価者間一致が優れていること、特に判定に難渋するレベルⅡの基準での判定精度が優れていること、アンダートリアージおよびオーバートリアージ率が低いことが明らかになった。 現在は最終的な研究データの集計及び結果分析を実施し、次年度(2020年度)に救急関連学会への論文投稿を準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度(2019年度)までの研究進捗状況としては、研究計画に沿って二次介入まで進行している。研究対象者の選定に際して、研究介入日の調整が難航し、データ収集に予定よりも多くの時間を要した。この対策として、流動的な介入日の調整や研究対象者が閲覧可能なメーリングリストでの周知を工夫した。そのため、二次介入で必要な研究参加者の募集は概ね終了した。 今後の研究の推進方策としては、収集したデータを分析した上で次年度(2020年度)に本研究成果を救急関連学会誌に投稿を準備している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度(2019年度)のデータ収集期間の延長に伴い、分析および原稿執筆に影響が生じた。そのため、最終年度に予定していた救急関連雑誌への投稿が遅延し、必要な論文収集および英文校正、投稿費用なども合わせて次年度に繰り越す必要性が生じた。 次年度(2020年度)は収集した研究データの分析および論文投稿に向けての準備を進めている。 使用用途としては、投稿時の英文校正ならびに雑誌掲載時のオープンアクセス費用を予定している。さらに、近年の救急臨床での動向を把握するために、救急関連雑誌の購入および研究協力施設への資料送付、受け取りに関わる郵送代を算出した。
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