研究実績の概要 |
本研究の目的は,就労世代のがん患者に対する就労継続のための看護支援プログラムを開発し,その有用性を検討することである. 研究5年目である2022年度は,研究4年目に精練した通院治療中のがん患者に対する就労継続への看護支援プログラムを8名のがん患者を対象に実施し,看護支援プログラムの有用性を検証した.具体的には,自己効力感を中心概念とした2回の個別面談による看護支援を実施した.その結果,面談前と比べて面談後では,自己効力感が高まったことに加え,EORTC-QLQ-C30におけるFunctional scalesのスコアが増加した.プロセス評価では,対象者の脱落はなく,すべての対象者は,面談に要した時間は適切であり,面談による負担感はなかったと回答した.また,対象者より「自分の置かれている状況を整理する良いきっかけとなった」,「悪いことを考えてしまうため,先々のことは考えないようにしていたが考える良いきっかけとなった」などの発言があった.以上より,対象者自身の体験の言語化を促すことで,思考や状況の整理に役立ったのではないかと考えた. 本研究の結果より,就労を継続する通院治療中のがん患者に対する看護支援プログラムを開発することができ,その有用性が示唆された. 今後は,さらなる発展のためランダム化比較試験を計画し,開発した看護支援プログラムの有効性を検証していく必要があると考える. 掲載されたレビュー論文:Kobayashi M et al. Psychological and educational support for cancer patients who return to work: A scoping review. WORK, 73(1):291-300, 2022
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