妊娠期の腰痛は約50~70%の妊婦が経験する代表的な不快症状である。妊娠期の腰痛の主な原因は、エストロゲンやリラキシンなどのホルモン分泌の増加による骨盤や腰椎の関節、靭帯の弛緩と、子宮の増大に対する体幹バランス保持のための腰椎の前彎と背筋の緊張の増大がある。しかし、後者の原因である腰椎の前彎に関する先行研究での報告では、統一した見解が得られていない。そこで本研究では、妊娠週数の経過による姿勢と足部の経時的変化の特徴と妊娠期の腰痛との関連を明らかにすることを目的とした。妊娠中の女性を対象とし、妊娠初期、中期、後期に、脊柱アライメント(胸椎後彎角度、腰椎前彎角度)、骨盤傾斜角度、足底接地面積比率、足部アーチ高率を測定し、併せて妊娠中の腰痛についての質問紙調査を行った。 妊婦の姿勢は妊娠経過に伴って、骨盤傾斜角度の増強、アーチ高率の低下、そして、腰椎の前彎が妊娠初期から妊娠中期にかけて一旦減少し、転じて後期になると増強する傾向にあったが、有意差はなかった。また、増大する子宮等の荷重によって足部が扁平化する傾向にあったものの、足部の接地面積が広くなっているわけでなく、踵による体重支持によって足趾が浮くような状態になっていることが考えられた。さらに、妊婦は妊娠後期になると右側に荷重がかかるようになっており、左右の重心のバランスが大きく変位していること等が明らかとなった。 2022年度は上記の結果について、論文として学会誌へ投稿した。現時点では投稿先の学会から採択された旨の返事をいただいたところであるが、掲載の詳細については未定である。
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