平成30年度は、「帝王切開による出産体験の自尊感情尺度」の作成に向け、国内外の先行研究をもとに帝王切開による出産体験がどのような体験であるかを明らかにすることを目的に文献検討を行った。その結果、帝王切開による出産体験には、「女性自身の身体的な体験」「母親としての体験」「重要他者との関係に伴う体験」という大きく3つの体験があることが分かった。 「女性自身の身体的な体験」には、帝王切開への恐怖や不安、陣痛や帝王切開の痛みへの恐怖など、身体的・心理的な体験があった。これらの帝王切開への恐怖や不安は、自らの身体の安全が求められていることを意味しており、生理的・安全欲求の感情である。つまり、この欲求が満たされないということにより、身体的・心理的な健康に影響を及ぼし、自尊感情を脅かすことが考えられた。 また、「母親としての心理的な体験」には、母親としての能力に関する体験と、児の健康を案じた体験があった。帝王切開で出産した女性は、経膣分娩できないことが女性として不能とみなされる体験や、女性として屈辱的な体験であり、経膣分娩できなかったという罪責感や出産したと言ってもいいのだろうかという遠慮があり、自尊感情の低下につながる体験であると考えられる。 さらに、「重要他者との関係に伴う体験」では、他の人々がどのように自分を気づかっているかということが、自分自身の評価や自分の人生において「重要な他者」から寄せられている尊敬・受容・関心が自尊感情に寄与することから、帝王切開による出産体験においても、重要他者との関係に伴う体験は自尊感情の低下につながる体験であると考えられた。 現在は、帝王切開による出産体験がどのような体験であるのかを文献検討した内容を論文としてまとめ、投稿準備中である。
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