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2019 年度 実施状況報告書

エルサルバドルのパイロット病院5施設における人間的出産モデルの構築と効果の検証

研究課題

研究課題/領域番号 18K17552
研究機関東京大学

研究代表者

笹川 恵美  東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (90757270)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード助産学 / 国際保健 / 母子保健 / 人間的出産 / 科学的根拠に基づいた医療 / エルサルバドル
研究実績の概要

「人間的出産」とは、本来、人間の自然な営みである分娩を生理学的に捉え直し、過度な医療介入を避け、女性の産む力・児の生まれる力に敬意を表し、力を最大限に活かせるよう支援する、分娩時のケアや医療者の在り様のことである。2017年の時点で、保健省は第2次医療機関全27施設中、5施設を「人間的出産」導入のパイロット病院として選び、その導入効果を評価しながら「人間的出産モデル」を構築し、さらには残りの第2次医療機関22施設へのモデルの展開を計画していた。しかし2018年、国内の第2次医療機関全27施設と第3次医療機関1施設、合計28施設が同時進行で「人間的出産」を導入する計画に変更となった。2019年の本研究の活動は保健省の計画変更に対応し、「人間的出産」に焦点を当てた分娩期ケアの向上を目的とした介入プログラムを、全28施設を巻き込んで実施し、また、医療従事者の人間的出産に関する理解度の調査を行った。具体的には、2019年3月、国内全28施設の産科病棟に勤務する医師・看護師・研修医を対象に、人間的出産に関する1日間のセミナーを開催した際、参加者合計は96名を対象に、セミナー前後でプレ・ポストテストを実施し、参加者の理解度評価を行った。講師は日本人研究者、ブラジルで人間的出産を実践する産婦人科専門病院から招聘した産科医、産科専門看護師、新生児科専門看護師だった。スコア平均は、19点満点中、プレテスト11.9点からポストテスト12.3点と、わずかに上昇したのみだった。理解度が100%に達したケアは、セミナー内でデモストレーションをした項目であり、今後、エルサルバドル人への「人間的出産」導入セミナーを実施する際、セミナーの構成を考えるうえで示唆を得ることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

エルサルバドル保健省の「人間的出産」に対する認識は向上し、保健省が毎年ホームページ上で公開する活動年報「保健省の活動2018-2019年」の中で、「人間的出産と出生に関する戦略」という項目が半ページにわたり記載された。主に、全ての国立病院で「人間的出産」のセミナーが実施されたことに関して報告された。
本研究は、「人間的出産モデル構築」を目指して実施されたセミナーや研修の介入効果が、臨床にどう反映されているかを調べるため、2020年3月と2022年7月の2時点で調査を実施する予定であった。調査対象施設は、産婦人科専門病院である第3次医療機関1施設(国立女性病院)と、第2次医療機関の国立病院5施設、計6施設である。調査は2つの研究から構成されている。1つ目の研究は「自記式質問票による出産満足度調査」であり、国立病院の入院患者として、分娩中から産後にかけて医療従事者から受けたケア・サービスに対する女性の満足度を評価する。満足度調査には、Janssenらによって英語で開発された40項目からなる自記式質問票COMFORTS(Care in Obstetrics: Measure For Testing Satisfaction)尺度(2006年)で、Montesらによって翻訳され、妥当性も検証されてスペイン語版(2012年)を用いるが、翻訳者からの使用許可は得ている。2つ目の研究は「直接観察による分娩時産科医療・ケアの質調査」で、人間的出産の観点から選んだ科学的根拠に基づいた分娩期のケア21項目に関する、ケアの質を評価するものである。東京大学医学系研究科の倫理審査が通り、エルサルバドルにおける倫理審査の途中で、Covid-19によるエルサルバドルの国立病院の研究活動延期、および渡航制限の勧告があり、3月に予定していた研究は実施できていない。

今後の研究の推進方策

Covid-19による海外渡航規制が解除され次第、エルサルバドルに渡航し、調査に取りかかれるよう準備を進める。なお現在、エルサルバドルの国立病院では、診療以外の活動を禁止している。例えば医学生や看護学生の実習受け入れといった教育活動や、日本の修士レベルに相当する専門医の実習受け入れと、専門医取得に必須となる研究活動(修士論文に相当)を制限している。そのため、研究倫理委員会も開催されていない。よって、今後の研究の推進方法としては、国立病院や保健省の倫理委員会が開始されると同時に、エルサルバドルに本研究の倫理申請を再度行い、承認を得次第、フィールド調査を行い予定である。しかし、渡航時期が未定のため(日本政府およびエルサルバドル政府の判断と、エルサルバドル保健省の判断による)、メールやZoom等を利用したオンライン会議を通じて、エルサルバドルの現状を把握しながら、質問票調査など、実現可能なものはエルサルバドル側の研究者の協力により、進めていく。

次年度使用額が生じた理由

2019年度に開始予定だった調査が未実施のため、調査員雇用に掛かる費用を繰り越すこととなった。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) 備考 (3件)

  • [雑誌論文] “Care in Normal Birth”から”Intrapartum care for a positive childbirth experience”へ:WHOの 正常産ガイドラインは,どのように変わったか?2019

    • 著者名/発表者名
      笹川恵美、春名めぐみ、米澤かおり、疋田直子
    • 雑誌名

      日本助産学会誌

      巻: 33 ページ: 50-60

    • DOI

      https://doi.org/10.3418/jjam.JJAM-2018-0026

    • 査読あり
  • [学会発表] エルサルバドルにおける「科学的根拠に基づく人間的出産」導入セミナー参加者の理解度評価2020

    • 著者名/発表者名
      笹川恵美、春名めぐみ、瀬戸菜月、三砂ちづる
    • 学会等名
      第33回日本助産学会
  • [学会発表] エルサルバドルの人間的出産を担う母子保健人材育成:ブラジル第三国研修の実践報告2019

    • 著者名/発表者名
      笹川恵美、春名めぐみ、三砂ちづる
    • 学会等名
      第60回母性衛生学会学術集会
  • [学会発表] ブラジルからの第三国専門家を活用したエルサルバドル国立女性病院の人間的出産に関するセミナーの評価2019

    • 著者名/発表者名
      笹川恵美、春名めぐみ、疋田直子、三砂ちづる
    • 学会等名
      第34回日本国際保健医療学会学術大会
  • [備考] 東京大大学院 医学系研究科 健康科学・看護学専攻 母性看護学・助産学分野 TOPページ

    • URL

      http://midwifery.m.u-tokyo.ac.jp/

  • [備考] 東京大大学院 医学系研究科 健康科学・看護学専攻 母性看護学・助産学分野 研究紹介&研究報告ページ

    • URL

      http://midwifery.m.u-tokyo.ac.jp/study_meeting/

  • [備考] エルサルバドル国立女性病院における科学的根拠に基づいた人間的出産プロジェクト

    • URL

      http://midwifery.m.u-tokyo.ac.jp/study_meeting/elsalvador/

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公開日: 2021-01-27  

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