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2020 年度 実施状況報告書

エルサルバドルのパイロット病院5施設における人間的出産モデルの構築と効果の検証

研究課題

研究課題/領域番号 18K17552
研究機関東京大学

研究代表者

笹川 恵美  東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (90757270)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード助産学 / 国際保健 / 母子保健 / 人間的出産 / 科学的根拠に基づいた医療 / エルサルバドル
研究実績の概要

「人間的出産」は、「日本が世界に貢献できる」、国際母子保健協力の一分野であると認識されている。「人間的出産」とは、人間の自然な営みである分娩を生理学的に捉え直し、過度な医療介入を避け、人間の産む力、生まれる力に敬意を表しながら、母児の力を最大限に活かせるような分娩時のケア、と捉えられている
エルサルバドルでは、保健省管轄の公立病院では、全ての医療が無償で提供されているが、分娩介助に関するサービスを提供しているのは、28施設である。2018年以降、この28施設を対象とした「人間的出産ケアモデル」の導入自体は順調に進んでいる。本研究は、これまでのセミナーや研修の介入効果が、臨床にどう反映されているかを調べることを目的に、2020年3月と2022年7月の2時点で調査を実施する予定であった。東京大学大学院医学系研究科・医学部倫理委員会の承認を得ていたが、エルサルバドル国立女性病院の倫理審査の審査プロセスの中で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的パンデミックが発生した。保健省は、エルサルバドルの全ての国立病院では医療行為以外の活動中止、つまり医学教育活動や研究活動は中止とし、COVID-19対策に専念する方針をとったこと、さらに、研究活動に伴う海外渡航も大学として中止となったことから、2020年3月に予定されていた本研究の調査の実施は延期となった。
2021年も、世界的にCOVID-19のパンデミックは続いているが、2021年4月より、エルサルバドルの首都、サンサルバドルを限定として渡航が認められたこと、エルサルバドル国立女性病院での倫理審査が通ったことを受け、現在、第3次医療機関1施設でのみ調査を開始している。第2次医療機関での調査は、首都以外の地方都市で行うことを予定しているが、現在は地方都市の訪問許可が下りないため、遠隔会議等を通じて、調整を進めている段階である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

現在、国内唯一の第3次医療機関であるエルサルバドル国立女性病院で、「人間的出産ケアモデル」の導入の効果を評価するための研究を実施中である。本研究は、【研究1】 産後女性の出産満足度調査(産褥病棟に入院中の褥婦約400名を対象)、【研究2】医療従事者の科学的根拠に基づいた産科ケア・助産ケアの知識に関する評価(周産期センター、産科病棟、産褥病棟、救急外来の4科で勤務する医療従事者約200名を対象)、【研究3】陣痛室・分娩室の直接観察による産科医療・ケアの質の評価(陣痛室・分娩室に入院中の産婦約160名を対象)から成っており、実施期間は5月3日~6月30日である。5月第1週までは、パイロット調査期間に充てる。2021年4月にエルサルバドルに渡航し、遠隔で調査を実施・管理できる体制を整えてきた。調査が軌道に乗るまで、毎日WhatsAppやZoomでMTGを重ねている。
「人間的出産ケアモデル」の導入に関しては、エルサルバドル保健省が妊産褥婦のケアに関するガイドラインを作成し、人間的出産ケアに関する詳細の説明にページを割いている。本ガイドラインを執筆した保健省職員は、本研究を通じて、人間的出産のケアモデル構築を行ってきたキーパーソンであり、エルサルバドル国内の人材育成も進んでいる。さらに、人間的出産ケアモデルを導入するにあたり、科学的根拠に基づいた医療(EBM)を大切にしているが、2018年にWHOが出版したEBMに基づく正常出産ガイドライン「WHO推奨:ポジティブな出産体験のための分娩期ケア」のスペイン語版を、エルサルバドルで増刷・配布する許可をWHOより得た。よって今後、印刷配布することで、より質の高い分娩時のケアを全国レベルで促す啓発教材として用いることができる。なお、WHOガイドラインの日本語訳が2021年3月に出版されたが、研究者が翻訳メンバーの1人として翻訳を担当している。

今後の研究の推進方策

エルサルバドルにおけるCOVID-19による入国規制が徐々に解除されたため、2021年4月、1年以上ぶりに、エルサルバドルへの渡航の機会を得た。そこで研究は大きく進むこととなったが、研究の推進のためには、やはり研究者の渡航は大きな影響力となることを実感している。継続してZoomやWhatsAppを通じた現地とのコミュニケーションは取りつつも、COVID-19の感染状況を見極めながら、必要時は、エルサルバドルへ渡航しながら研究活動を推進し、未着手の第2次医療機関での調査開始を行っていく。
なお前述の通り、保健省は妊産褥婦のケアに関するガイドラインを2021年1月作成し、人間的出産に関する詳細が記述されることとなったた。また、WHOの正常出産ガイドライン「WHO推奨:ポジティブな出産体験のための分娩期ケア」スペイン語版については、WHOより印刷および配布許可を得たことから、今後は2つのガイドライン分娩時ケアの質の向上を促す啓発教材として用いることで、エルサルバドル国内全域の人間的出産ケアモデルの普及効果への良い影響を期待している。

次年度使用額が生じた理由

ベースライン調査の延期のため、調査員雇用に掛かる費用を繰り越すこととなった。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) 図書 (2件) 備考 (3件)

  • [雑誌論文] ラテンアメリカにおける出産のヒューマニゼーション:助産ケアの法令化2021

    • 著者名/発表者名
      笹川恵美, 春名めぐみ, 三砂ちづる
    • 雑誌名

      日本助産学会誌

      巻: 35(1) ページ: 57-65

    • DOI

      10.3418/jjam.JJAM-2020-0036

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 「出産のヒューマニゼーション」概念のラテンアメリカ諸国の法令・政策への波及と包括2021

    • 著者名/発表者名
      笹川恵美、春名めぐみ、三砂ちづる
    • 雑誌名

      Journal of International Health

      巻: - ページ: -

  • [学会発表] 助産ケアの法令化:ラテンアメリカにおける出産のヒューマニゼーションを例として2021

    • 著者名/発表者名
      笹川恵美、春名めぐみ、三砂ちづる
    • 学会等名
      第35回日本助産学会学術大会 Web学会
  • [学会発表] 法令化 による国際技術協力プロジェクトの持続可能性: ラテンアメリカの出産のヒューマニゼーションを例に2020

    • 著者名/発表者名
      笹川恵美、春名めぐみ、三砂ちづる
    • 学会等名
      第85回日本健康学会 Web学会
  • [図書] 科学的根拠から考える 助産の本質2021

    • 著者名/発表者名
      編/三砂ちづる、著/左古かず子、野口真貴子、笹川恵美、他
    • 総ページ数
      100
    • 出版者
      南山堂
    • ISBN
      978-4525501815
  • [図書] WHO推奨 ポジティブな出産体験のための分娩期ケア2021

    • 著者名/発表者名
      分娩期ケアガイドライン翻訳チーム:飯村ブレット、小宇田千恵、笹川恵美、他
    • 総ページ数
      256
    • 出版者
      医学書院
    • ISBN
      978-4-260-04197-3
  • [備考] 東京大大学院 医学系研究科 健康科学・看護学専攻 母性看護学・助産学分野 TOPページ

    • URL

      http://midwifery.m.u-tokyo.ac.jp/

  • [備考] 東京大大学院 医学系研究科 健康科学・看護学専攻 母性看護学・助産学分野 研究紹介&研究報告ページ

    • URL

      http://midwifery.m.u-tokyo.ac.jp/study_meeting/

  • [備考] エルサルバドル国立女性病院における科学的根拠に基づいた人間的出産プロジェクト

    • URL

      http://midwifery.m.u-tokyo.ac.jp/study_meeting/elsalvador/

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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