分娩介助技術に関して、会陰裂傷予防の観点から、分娩第2期の会陰保護は必ずしも必要ないと述べている(日本助産学会誌)。われわれは、助産所の熟練助産師が、児や会陰には介助者の力は加えず、自然な陣痛による出産を見守っている技術(watching法)を明らかにした。これらの方法は、助産学テキストとは異なる方法であった。そこで、本研究では、母児の出産を見守る方法を「watching法」、助産学テキスト通りの方法を「standard法」として、2群間での母児の健康状態を比較することを目的とした。 2019年6月から2021年3月の分娩症例303件を対象にした。「watching法」と「standard法」の2群間での分娩後の母児データを分析した。データは、助産録及びカルテから収集した。主要アウトカムは、会陰裂傷の有無、総出血量、アプガースコア、児の出生後の呼吸数、努力呼吸の有無とした。分析はSPSSVer.26 にてχ2検定、t検定、MannWhitneyU検定を行った。本研究は、研究者の所属大学研究倫理審査委員会の承認(承認番号20190010)を受けて実施した。 「watching法」151件、「standard法」152件であった。watching法の助産師の方が有意に年齢、経験年数、経験分娩介助件数(p=.001)ともに高かった。母体の総出血量、会陰裂傷の有無、アプガースコア、児の出生直後・1・2時間後の呼吸数、出生直後・1時間後の努力呼吸の有無では、「watching法」の方が有意に母児間の侵襲が少なかった。出生2時間後の児の努力呼吸の有無は2群間に差はなかった。 「watching法」は、経験豊富な熟練助産師の方が多く実施していた。「watching法」は、「standard法」に比べて、母体の出血量、会陰裂傷ともに有意に少なく、母児にとって優しい介助方法であるといえる。
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