本プロジェクトでは、稀少な染色体異常症に焦点を当て、「家族がわが子を育てる中で必要とする支援にアクセスしやすくするためには、どのような方策を取る必要があるか」をプロジェクト全体の問いとして実施した。 稀少な染色体異常のある児の家族を対象とした調査を実施し、家族が疾患をもつ子を育てる体験を明らかにし、その中での看護の立場からの支援の在り方について検討した。 調査の結果得られた家族の体験として、わが子の疾患が判明した当初、家族は深い衝撃を受け、疾患をもつわが子の育児を行うための有用な情報が得られにくい状況に困惑したり、様々な症状を呈するわが子の育児を行う上での困難を極めたりしていた。また、身近に同じ疾患の児や家族がいない場合が殆どであり、社会におけるマイノリティであることの心細さを抱いていた。 その一方で、染色体異常症の多くは親からの遺伝によらない場合が多く、明確な診断名がつくことは、「子の疾患が自分たちからの遺伝によるものではないこと」、「自らの育て方のせいではない」ことを医学的に保障することにもなっていた。 家族が困難な状況から脱するきっかけとして療育やリハビリ等の「支援につながる」事と、「ピアと出会う」事があったが、稀少な染色体異常症の場合は疾患の稀少さ故に、これらが叶えられにくい点こそが本プロジェクトの対象の特徴として考えられた。 看護職者はこれらの特徴を踏まえ、個々のニーズに見合う継続的な支援体制を家族らと模索していく必要がある。さらに、家族が自らの状況にスティグマ意識を抱く可能性がある点にも十分に配慮しながら、家族の自尊感情を高めるよう支援することが求められる。個々の疾患が極めて稀であるからこそ、疾患に関するより詳細で生活に根付いた情報を蓄積し、家族が育児に役立てられるように整備し、看護を通して児や家族がおかれる状況をアドボケイトしていく必要があることが示唆された。
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