研究課題/領域番号 |
18K17559
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
秋月 百合 熊本大学, 大学院教育学研究科, 准教授 (90349035)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 妊孕性 / 学校教育 / 性に関する指導 / リプロダクティブヘルス / 不妊 |
研究実績の概要 |
若者の将来の妊娠・出産・家族形成に関するライフプランニングとその実現を視野に入れた性教育ガイドの作成に向け、以下のことを実施した。 高等学校養護教諭3名を対象に、性に関する指導の現状、妊孕性教育の経験と可能性について個別インタビューを実施した。その結果、『減量中の女子への指導』、『月経不順の生徒への指導』、『摂食障害の生徒への指導』、『不特定多数との性的関係を持つ生徒への指導』の中で、妊孕性に関する指導がなされていた。また、妊孕性教育の可能性については、『将来の幸せな家族形成のためのライフデザインを検討させる授業』、『修学旅行前の月経指導のタイミング』において、妊孕性の知識を取り入れた指導が可能であるとのことであった。高等学校での性に関する指導の経験と課題としては、【月経(不順・生理痛)】、【妊娠・出産】、【性被害】、【LGBT】、【男子生徒の性に関する相談】の4つのカテゴリーが抽出された。 また、中学校教諭(教科担当問わず)4名にもグループインタビューを行い、中学生の性教育の現状と課題、妊孕性教育の経験と可能性について尋ねた。 本研究に先立って実施した大学生向け妊孕性教育プログラムの効果について、横断的および縦断的に検討した結果を、日本受精着床学会、日本学校保健学会で報告した。また、妊孕性教育に関する研究概要を、東京大学甲斐会研究会主催研究シンポジウムにおいてシンポジストとして報告した。学術論文として、上記結果およびICT教材を使用した性に関する指導の取り組みについて発表した。指導の実践としては、熊本県内の高校生を対象に、妊孕性に関する性教育講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、若者が望む将来の妊娠・出産・家族形成の自己実現に向けた性に関する指導について、現職教諭のインタビューを2種行った。当初の予定では、最初の2年で2種のインタビュー調査を予定していたが、3種のインタビューを行うことができた。保健教諭を対象としたインタビューは行っていないが、小学校または中学校に勤務する養護教諭のグループ、高校勤務の養護教諭(個別インタビュー)、養護教諭や保健教諭でない中学校教諭のグループを対象としてインタビューを行った。小中学校勤務の養護教諭、高校勤務の養護教諭、中学校教諭の視点から、それぞれの校種における性教育上の課題や妊孕性教育の現状と可能性について明らかにすることができた。具体的には、義務教育の現行の学習指導要領を踏まえて、どの教科のどの単元でどのように妊孕性関連した内容を組み入れることが可能かを検討することができた。また、高校の性に関する個別指導や集団指導においても、どのような生徒への指導、どのような授業で組み入れることが可能かを検討することができた。これらは、大学4年生の卒業研究としても取り扱い、将来養護教諭になる大学生への教育的意義を持たせることができた。 これらのことから、本研究の進捗状況として、おおむね順調に経過していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでのインタビュー結果を学術論文として発表し、学会においても公表する予定である。日本学校保健学会、日本母性衛生学会等を検討中である。 本研究の次の段階として、妊孕性教育の現状と課題、可能性等について、熊本県内の高等学校を対象に(保健担当教諭や養護教諭)、アンケート調査を実施する予定である。 2020年4月時点において、新型コロナウイルス感染症の拡大予防のため県内の高校が休校となっている。今後高校における保健の授業がどの程度実施されるのか不明であるため、状況によっては、アンケート調査を来年度に実施する可能性がある。そして、小中学校の学習指導要領を踏まえ、どのように妊孕性に関する内容を指導可能かについて整理する。
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次年度使用額が生じた理由 |
この度34,961円の次年度使用額が生じたが、前年度繰越金が生じたことと、本年度人件費を使用せず研究が実施できたことが理由と考える。当該使用額は、来年度の実施予定であるアンケート調査等に使用する予定である。
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