研究課題/領域番号 |
18K17559
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
秋月 百合 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 准教授 (90349035)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 妊孕性 / 性に関する指導 / リプロダクティブヘルス / 不妊 / 保健科教育 / 学校教育 |
研究実績の概要 |
本年度は熊本県高等学校の保健体育科教諭および養護教諭の妊孕性に関する知識、指導経験、指導の必要性、文部科学省発行高校生用「健康な生活を送るために」の使用状況、平成30年告示版高等学校学習指導要領解説保健体育編体育編における妊孕性に関する新規指導内容に対する準備状況等の実態をアンケートにより調査した。 272名の保健体育科教諭に依頼し145名(回収率53.3%)が、養護教諭88名のうち46名(回答率52.3%)がアンケートに回答した。妊孕性に関する知識23項目のほとんどの項目で保健体育科教諭より養護教諭の方が知っているとの認識を示し、23項目の半数以上が高校で指導されるべき項目と認識していた。指導の経験がある人は、養護教諭より保健体育科教諭に多かった。指導にあたって必要と認識するサポートは、ガイドブック、研修セミナー、ウェブサイトの順に多かった。文部科学省発行の高校生用副読本「健康な生活を送るために」を全く使用したことのない教諭は約37%、1~2度使用したことがあるのは約40%であった。高校保健体育学習指導要領解説の改訂に伴い、妊孕性に関連した指導の準備を既に始めているもしくは始める予定であると回答した教諭は全体の5割を超えた。 本結果から、若者の将来の妊娠・出産・家族形成に関するライフプランニングとその実現を視野に入れた性教育ガイド(教諭向け)を検討する上での重要な示唆を得ることができた。また、学校教諭が必要とする具体的知識や情報、支援の形態についても示唆を得た。 当該年度は、前々年度に実施した中国教育学部生の卵子提供に関する意識や態度を論文発表した。また、不妊症患者の社会関係について原著論文および解説論文を発表した。COVID19蔓延のため学会学術集会の開催が中止されたこともあり、学会発表は控えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の交付申請書に計画した通り、当該年度は、高等学校に勤務する保健体育科教諭および養護教諭の妊孕性に関する知識について、また指導経験や意識についてアンケート調査を実施することができた。研究者の病気休暇取得およびCOVID19の影響により、アンケート調査の実施が予定より数カ月遅れたものの、産婦人科医師および疫学研究者の協力を得て年度内に実施することができた。 本アンケート調査の結果から、次年度実施予定の教諭向け「若者の将来の妊娠・出産・家族形成に関するライフプランニングとその実現を視野に入れた性教育ガイド」を検討する上での具体的示唆、例えばどのような知識や情報が必要であるか、どのような支援形態が良いかなどについて考える材料を得ることができた。また、大学4年生の卒業研究としても本テーマを取り扱い、将来養護教諭になる学生への教育的意義を持たせることができた。 これらのことから総合すると、本研究の進捗状況として、おおむね順調に経過していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本研究課題の交付申請書の計画通り、教諭向け「若者の将来の妊娠・出産・家族形成に関するライフプランニングとその実現を視野に入れた性教育ガイド」を作成する予定である。その前に、本年度のアンケート調査結果を再度分析し、保健体育科教諭および養護教諭の妊孕性に関する知識や指導に対する経験・意識、必要なサポート等に関して実態を整理する。 指導ガイドについては、現在のところガイドブックの形態を検討している。作成には、産婦人科医師や現職の高校保健体育教諭、養護教諭と相談しながら、また教育的意義のため養護教諭を目指す大学4年生も参加し進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
第一の理由は、新型コロナウイルス感染症拡大とその予防のため、国内外の各種学会や研修会・研究会が中止またはリモート開催となり、旅費および学会等参加費が不要となったことである。第二に、調査の準備および集計等の依頼に対する謝金を予定していたが、その必要性がなくなったことがある。
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