本研究は、「不妊夫婦、生殖医療施設、児童相談所の3者間の連携システムを構築し里親制度(特別養子縁組)の運用方法を示す」ことを3か年で実施する計画であった。里親制度の運用に向け、3者それぞれの特徴を明らかにし、最も効果的な連携システムの検討を図ることを目指した。 初年度は、里親制度の運用方法の知見を得るために、児童福祉先進国であるドイツの視察を行い、児童福祉機関(児童相談所)の強い介入権があることが、運用に不可欠である知見があった。次年度は、里親制度を利用する立場にある世代への意識調査を行い、利用するためには、特別な要件が求められているとの認識があることが示された。最終年度には、初年度、2年目の知見を踏まえ、不妊夫婦に直接関与する生殖医療施設に従事する専門職者の里親制度(特別養子縁組)に対する認識の意識調査を実施した。調査は、日本産科婦人科学会登録施設(607施設)に勤務する医療従事者を対象とした。分析対象は807名である。医療従事者は、里親制度の中で養子縁組制度(特別養子縁組制度)については、大多数の者が認知していた一方で、里親制度全般についての理解は十分ではないことが示された。また、不妊夫婦に対して、里親制度の紹介割合は約25%であった。このことは、医療従事者が不妊治療の限界を話した経験がない物が3割程度存在していることや、治療の終結は患者の意思に任せるとした物が半数存在しており、不妊治療終結後の不妊夫婦の生活への関与が少ないことと関連していることが推察された。また、最終年度では、里親制度を広く一般住民に向けて普及することを目的としての啓発活動をセミナー形式で実施した(参加者73名)。セミナーアンケートより、里親制度の理解と里親を必要としている子どもたちへの理解が促進されたことがうかがえ、セミナーの実施の一定の効果は得られたものと考える。
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