研究実績の概要 |
成人移行期DMD患者の在宅自立生活における公的支援のひとつとして、重度訪問介護事業が重要な役割を担っていることから、重度訪問介護事業所の利用者を対象に研究協力を募り、昨年度得られたデータ(n=446)の解析を行った。対象者の疾患ごとの割合は、多いものから脳性麻痺25.2%、脳血管障害(外傷性含む)12.6%、脊椎損傷・頸椎損傷12.6%、筋萎縮性側索硬化症9.9%、進行性筋ジストロフィー4.2%などであり、DMDの割合は多くなかったが、神経・筋疾患が上位を占めていたことから、最初の段階として対象者全体の解析を実施している。 在宅自立生活では、十分な支援・ケアが得られ、自身でマネジメントをしながら生活することの重要性が報告されている。まず一つの仮説として、医療的ケアが多いほど、それにかかる時間や技術が多くなるが、対応可能な公的なケアが十分ではない可能性があり、その結果家族の介護負担がより高いのではないかということに着目した。家族による医療的ケアの数や家族介護負担、訪問医療や介護の利用時間数などを変数として、多変量解析を行った。多項ロジスティック回帰分析の結果、医療的ケアが多い場合は医療的ケアがない場合に比べ、家族介護負担が多いことが明らかとなった(OR=2.41、95%CI=[1.05,5.54]、p<0.05)。このことから、複数の医療的ケアが必要な在宅重度障害者では、ケアを家族が多く担っている傾向にあることが考えられた。医療的ケアが多い対象者では、公的支援がより必要である可能性があることが分かった。
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