研究課題/領域番号 |
18K17573
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研究機関 | 沖縄県立看護大学 |
研究代表者 |
上原 和代 沖縄県立看護大学, 看護学部, 准教授 (70406239)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | NICU / 親 / 退院準備性尺度 / 標準化 |
研究実績の概要 |
本調査はNICUから退院する乳児の親を対象にした、退院前、退院後1週と1か月の3時点における縦断的質問紙調査でWeiss(2008)が開発した小児病棟から退院する子どもの親の退院準備性尺度の日本での標準化が目的である。本調査の回答票は連続データとして分析可能である。国内の3地域3施設において275人に調査票を配布し退院前調査の参加者は185人(67.2%)であった。参加者の背景は、母親75.7%、初産48.6%、核家族82.2%、退院先は自宅55.1%、支援者の最頻値は2人であった。乳児の平均出生体重は1954g(SD±770,466-3785)、平均出生週数33.8週(SD±4.2,22-41)、平均在院日数45.2日(SD±38.3,7-180)、退院後も医療的ケアが継続する子どもは76.8%であった。 JRHDS-PFの因子分析の結果、原版よりも1つ少ない4因子構造となった。第1因子はKnowledge 9項目とCoping Ability3項目に加えて、Parent Personal Status1項目が加わり計13項目で「ケアの知識と対処能力」とした。第2因子は原版のChild Personal Status 5項目で「子どもの状態」、第3因子は原版のParent Personal Statusから1つ少ない7項目で「親の状態」、第4因子は原版のExpected Support 4項目で「期待される支援」と名付けた。RHDS-PFの5因子構造が4因子構造となったのは2014-2015年に行ったA県内のNICUでの調査結果と同様でNICUから退院する子どもの親の養育経験の少なさにより育児の知識と自身の対処能力の差異が不明瞭であることが推測された。なお、29項目の内部一貫性は高く(Cronbach'sα=.919)、因子の累積寄与率は50.77%で、天井効果が認められるものは1項目であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国内3地域でのデータ収集は2018年度末に完了し、2019年度は開発中の2つの尺度のうち日本語版早産児の親の在宅移行尺度(Transition-to-Home: Premature Parent Scale:JPTQ)について国際学会でポスター発表した。2020年度は日本語版退院準備性尺度親用(Readiness for Hospital Discharge Scale-Parent Form Japanese version : JRHDS-PF)の分析・公表に並行して、追加の施設調査、論文執筆、尺度の利用方法の周知と尺度のユーザビリティの検討を計画していた。 2020年1月以降、現在も継続している新型コロナウイルスの世界的流行を受けて、本調査協力施設においても外部研究者の出入りの制限が厳しくなり、参加者の退院後2~3年の転帰に関する追跡調査を延期した。また、所属大学での遠隔授業化、臨地実習の学内実習への変更により教育業務や管理運営業務が増大し、計画していた研究に費やす時間を捻出できず、計画していた国内学会へのエントリーは延期した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染拡大に伴う研究の進捗不良により2021年1月に補助事業期間の延長申請を行い、同3月に承認された。変更の補助事業期間は令和3年度までである。令和3(2021)年度JRHDS-PFの分析結果の国際学会での公表準備と並行して臨床看護師がJRHDS-PFとJPTQを利用しやすいよう、自動計算プログラムを作成し、次のステップとして国内多施設共同研究の計画を準備したい。プログラム作成とインターネット等での公開に関して原版作成者への相談、許諾の手続きが必要である。両尺度の原版作成者からは海外雑誌への投稿を要望されているため、執筆活動も進める。また、感染の収束状況を見て調査協力機関での追加調査が可能となれば各尺度のカットオフ値の検討を開始する。 懸念事項として、英語での投稿が未経験のため時間と費用がかかることである。英語論文の校正については尺度の日本語訳の際にJPTQの原版作成者から紹介を受けた、米国で勤務している日本人の新生児ナースプラクティショナーの協力の内諾を得ている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度、本研究はほとんど進捗しなかったため、施設での追加調査、標準化に向けた専門家からの助言、尺度の自動計算等のウェブプログラミング、海外誌への投稿にかかる費用が持ち越しとなっている。国内の新型コロナウイルスワクチン接種率は現時点で2.4%であり、感染蔓延状況にあるため施設での追加調査は1年以上の先送りを予測している。このため執筆活動と両尺度の利活用のための準備を優先し、合わせて補助金の使用計画を変更する。
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