研究課題/領域番号 |
18K17588
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研究機関 | 四国大学 |
研究代表者 |
金山 三惠子 四国大学, 看護学部, 教授 (60757912)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | バーンアウト / 医療的ケア児 / 特別支援学校 / 多職種協働 / 協働達成感 |
研究実績の概要 |
令和3年度も新型コロナウィルス感染症の影響により,データ収集や検討会議などが実施できなかったため,新たなデータを追加して分析が進められなかった。そこで,取得済みのデータを用いて,バーンアウトに影響を与える要因の分析を行った。重回帰分析を用いてバーンアウトの最適モデルを検討した結果,バーンアウトの最適モデルに残った変数は,勤務形態,経験年数,日常的コミュニケーションへの充足感,専門性の認知・尊重に対する充足感であった。これらの中で最も偏寄与率が高い変数は日常的コミュニケーションの充足感であった。バーンアウト研究者の殆どが,バーンアウトのストレス要因として職場での人間関係をあげており,本研究においても,同様の結果が得られたとも考えられる。しかし,本研究において日常的コミュニケーションがバーンアウトに最も影響する要因となったのは,特別支援学校の医療的ケア従事者独自の理由が存在するのではないかと着目している。この独自の理由について立てた仮説は,援助者間のケアに関する価値観や考え方の違いである。医療的ケアを受ける子どもはコミュニケーションの障がいを有しているため自らの健康状態や気持ちなどを他者に伝えることが困難である。そのため,援助者の言葉が子どもたちのこころとからだの状態を代弁することになる。もし,援助者間で,子どもたちの心身の状態に関する感じ方やアセスメントの違いが生じた場合,ケアの方法やタイミングなどの考え方の差異が生じてしまう。この援助者間の考え方の差が生じた場合に不満やケアのリスクに対する不安となり,ストレッサとなるのではないか。だから,日常的コミュニケーションがバーンアウトに最も影響する要因となったのではないかと考えた。この分析結果から特別支援学校における医療的ケアの特殊性がバーンアウトに影響するのではないかということが分かった。これが令和3年度の成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和3年度に特別支援学校にて協働尺度の評価指標作成のためのデータ収集を予定していたが,新型コロナウィルス感染症予防対策により学外者の構内立ち入りの制限等があり,データの収集ができなかった。このことから,研究計画に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
協働尺度の評価指標の完成に向けた追加データの収集は進行中であるがまだ不十分である。オンラインでのインタビュー調査を行っているが,対面で行うインタビュー調査と同等レベルのデータを得られていない。そのため過去に取得したデータと新たに得たデータを同等に扱って分析することが難しく協働尺度の評価指標の作成が進んでいない。引き続き追加のデータ収集を行うことや分析方法を工夫することが必要であると考えている。そして,研究延長期間で協働尺度の評価指標の完成を目指す。また,特別支援学校における医療的ケアの特殊性がバーンアウトに影響しているのではないかという成果を学術誌や学会で発表する予定である。さらに,特別支援学校の医療的ケア従事者間のコミュニケーションの難しさを解消するための方策を検討することがバーンアウトを減らす手立てになると考えられるため,特別支援学校の医療的ケア従事者間のコミュニケーションのどういったことがストレッサとなるのかについても検証したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
協働尺度の評価指標作成のためのデータ収集が新型コロナウィルス感染症の予防対策による行動制限等のため実施できなかった。そのため,計上していた旅費や消耗品費等の経費が使用できなかった。新型コロナウイルス感染症対策が緩和され,それに伴い協力校の状況は改善している。そこで令和4年度はデータ収集が再開できる見込みである。次年度に繰越した予算はデータ収集のための移動費や海外の学術誌への投稿費用(翻訳料)等に充てる計画である。
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