令和4年度も新型コロナウィルス感染症の影響により,データ収集や検討会議などが実施できなかったため,新たなデータを追加して分析が進められなかった。そこで,取得済みのデータを用いて,バーンアウトに影響を与える要因の分析を行った。今年度行った分析は,バーンアウトに影響を与えるコミュニケーションについての検討である。昨年度までの研究成果として,重回帰分析によりバーンアウトの最適モデルを検討した結果,バーンアウトの最適モデルに残った変数は,勤務形態,経験年数,日常的コミュニケーションへの充足感,専門性の認知・尊重に対する充足感であった。これらの中で最も偏寄与率が高い変数は日常的コミュニケーションの充足感であった。この日常的コミュニケーションについてデータの収集と分析を行った。コミュニケーションといっても,日常会話からビジネス会話まで幅が広く,具体的に,どういったコミュニケーションがバーンアウトに影響するのかを明らかにしていくことが今年度の課題であった。その結果,バーンアウトに最も影響しているのは障がいを有する子どもの心や体の状態の解釈に関するコミュニケーションである可能性を示唆するデータが得られた。医療的ケアを受ける子どもはコミュニケーションの障がいを有しているため自らの健康状態や気持ちなどを他者に伝えることが困難である。そのため,援助者の言葉が子どもたちの心と身体の状態を代弁することになる。もし,援助者間で,子どもたちの心身の状態に関する感じ方やアセスメントの違いが生じた場合,ケアの方法やタイミングなどの考え方に差異が生じてしまう。この援助者間の考え方に差が生じた場合に不満やケアのリスクに対する不安となり,ストレッサとなる可能性を示唆することを示す結果が得られた。これが令和4年度の成果である。
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