【目的】近隣トラブルを抱えた精神障害者に関する自治体保健師と地域組織との連携を明らかにすることとした. 【方法】2021年1月~12月に,近隣トラブルを抱える精神障害者へ関わる地域組織と連携した経験を持つ自治体保健師を対象に約60分の半構造化によるグループインタビューを実施した.「近隣との問題を抱える精神障害者に対する地域組織との連携」に該当するデータを抽出し,「近隣トラブルと住民の反応」「保健師がとらえた民生委員」等について記述を整理した. 【結果】14名の保健師を対象に5箇所でグループインタビューを実施した.所属は保健所4名,市町村10名,保健師経験年数は平均19.07年であった.13の支援事例を分析対象とした.把握のきっかけは,前任者からの引継ぎ,民生委員からの相談,障害福祉サービス利用申請時の把握等であった.年代は,20代から70代であった.また7事例が独居であった.独居のケースのうち,かつては親と同居していたが,親の他界後に持ち家で独居になったケースが複数あった.診断名は,統合失調症,人格障害,アルコール依存症,てんかん等であった.医療とのつながりについては,定期的な通院があるのは3事例であった. 【考察】本研究では,住民組織にとって保健師が近隣トラブルに関連する困りごとを相談しやすい関係があった.その背景には,これまでの連携の積み重ねによる信頼関係が基盤にあることが推察された.保健師は民生委員の個々の背景を踏まえ,民生委員の力量を引き出すとともに,負担感の軽減に対する配慮がなされていた.地域では,本人の人権や居住権を考慮し,本人の親の代からの交流があるなど、本人への情を持たれていた.しかし恐怖感の間で葛藤を抱えていた.今後は事例の個別性,地域性や精神障害者に対する地域ケアシステムの実情,自治体保健師の組織や活動体制等を踏まえた連携のあり方を追究していく必要がある.
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