研究課題/領域番号 |
18K17608
|
研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
大村 佳代子 兵庫県立大学, 看護学部, 准教授 (30722839)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 医療情報の共有 / 医師ー看護師連携 / 訪問看護指示書 |
研究実績の概要 |
初年度は、円滑な連携のもと医療情報の共有を行っている看護師に面接調査を行い、訪問看護が必要とする医療情報と、どのように医療情報が共有されているのかを明らかにし、その中から訪問看護指示書の意義や課題について明らかにすることを目的とした。 A県内の訪問看護師または病院地域連携室の看護師を対象に、半構造化面接を行った。面接では、研究参加者の基本情報と、新規依頼の療養者における医療情報の収集・提供プロセス、工夫点や困難な点、そして訪問看護指示書の課題等について質問した。調査内容はICレコーダに録音し、逐語録を作成した。分析方法は逐語録を繰り返し読み、医療情報の情報収集・提供に対する看護師の認識・行為を抽出してコード化し、類似性と差異性について理論的比較を行いカテゴリ化した。《 》はカテゴリ、【 】はサブカテゴリを示した。 研究参加者は8名の訪問看護師、4名の地域連携室看護師であった。《訪問看護師が求める医療情報》には【治療経過と今後の治療方針】【家族構成や重要他者の情報】【緊急時の対応医師への連絡先】【訪問看護では観測不可能な検査データ】等が抽出された。さらに《訪問看護にとっての訪問看護指示書の意義》として、【訪問看護開始の法的根拠】【保険点数の算定根拠】【主導医が誰かを示すもの】【療養者の医療情報を収集ツール】の4つが挙げられた。情報共有の方法とその困難さは、療養者が入院中か通院中かで異なっていた。特に外来終診後の療養者と、二次・三次医療を提供する中~大規模病院に多科受診している療養者で、情報共有の困難さが語られた。《医療情報共有の困難》では、【欲しい内容の記載がない】【欲しい時期に指示書が来ない】等、どのような場面においても共通する困難と、情報共有時の状況に特有の困難が見られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に予定していた調査はほぼ達成出来た。研究参加者のサンプリングにおいて、目標10~15名としていたところ、12名の調査を実施した。調査を実施した地域においても、都市部の調査を中心に、中山間地域、海に囲まれた離島地域についても聞くことができた。また、常勤の管理者およびスタッフからの意見だけでなく、非常勤や新卒の訪問看護師など、当初予定していた通りの様々な調査対象者に意見を聞くことが出来た。 ただ、カテゴリの理論的飽和に至ったかどうかまでは確認出来ていないが、今後は初年度の結果を量的調査で補完・確認していくため、この点については大きな問題とはならないと考える。 分析においては、ほぼ大枠のカテゴリは抽出出来てきているが、今後さらに精査し、分析結果を質問紙票として作成し、量的研究にて現象を確認していく。
|
今後の研究の推進方策 |
2年目にあたる今年度は、面接調査で得られた項目をカテゴリ化し、先の面接調査で協力を得た訪問看護師の中から更に協力を得られる者複数名と検討会を行い、より良い医師-看護師間の連携についての質問紙票を作成する。 初年度当初は、訪問看護指示書の変更案を作成することを目標としていたが、そこに限定することなく、初年度の調査で明らかとなった医師-訪問看護師間の連携に重要と思われる点について、質問紙票を作成し、A県内の訪問看護ステーション・診療所・病院連携室を対象に調査を実施する。調査内容は、医師の立場から追加を希望する項目、記入にかかる時間や情報量等についての意見等について調査を行う。3年目以降の介入研究についての参加意向についても確認し、具体的な介入プログラムについて検討していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由について、調査は予定通り実施したが、異動のため申請時の所属で必要と考えていた交通費が、現在の所属においてはそこまでかかることがなく節約出来た。面接調査においても、申請当初は院生や他の教員と複数で実施する予定にしていたが、全ての調査で同行した訳ではなかったため、その交通費がかからなかった。また、初年度の学会発表は、2年目以降に予定しており、今年度の予算は2年目の発表に当てる予定である。質的研究の結果から、質問紙票作成にあたり、検討会の実施と参加者への謝礼についても初年度に計上していたが、2年目以降に実施し、その費用に充てる予定である。これに使用してもし余剰が出る場合は、2年目に予定している質問紙票調査の配布数を可能な範囲で増加し、調査の信頼性を増す。
|