本研究は、療養病床、介護老人保健施設、介護老人福祉施設に勤務する看護職のワーク・エンゲイジメント因果モデルを検証し、心身の健康と仕事のパフォーマンスを促進する因果プロセスを明らかにすることを目的とした。 療養病床、介護老人保健施設、介護老人福祉施設に勤務する看護職を対象に質問紙調査を実施し、共分散構造分析にて、ワーク・エンゲイジメントの因果モデルを検証した。その結果、個人の資源と仕事の資源を先行因子、ワーク・エンゲイジメントを媒介因子、心身の健康と仕事のパフォーマンスをアウトカムとする因果プロセスが明らかとなった。療養病床と高齢者施設に分けての多母集団の同時においては、施設によるプロセスの違いが明らかになり、一部にワーク・エンゲイジメントの媒介効果が認められた。療養病床においては仕事の量的負担が少ないこと、職場のポジティブな資源が高いことがストレスを抑制し心身の健康を促進すると示唆された。高齢者施設においては職場のポジティブな資源が高いことがストレスを抑制し心身の健康を促進すると示唆された。仕事のパフォーマンスの向上には、療養病床も高齢者施設も個人の資源であるレジリエンスが影響しており、特に療養病床においては、持って生まれた気質と関連の強いレジリエンス要因が大切であると示唆された。さらに、高齢者施設では、部署レベルの仕事の資源が高いことが仕事のパフォーマンスの向上を促進すると示唆された。
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