研究課題/領域番号 |
18K17624
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
高橋 佳子 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 病院, 研究生 (70782027)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 褥瘡 / 外力と骨突起の相互関係 / 褥瘡モデル |
研究実績の概要 |
深い褥瘡にみられる特異的な形態であるポケット形成は、褥瘡治療・ケアにおいて大きな問題となる。しかし、ポケットを有する既存の褥瘡に対して、外力が創にどのように影響を与えるかは不明であった。そのため、褥瘡を有する患者のケアに関しては不明な点が多かった。本研究では、ポケットを有する褥瘡と外力との関係を明にするため物理学的な褥瘡―ケアモデルの構築を目指している。 平成30年度に実際の褥瘡に物理的特性を近似させたポケットを有する褥瘡モデルを、ウレタンフォームを用いて作成した。これをファントムの仙骨部に装着し、ギャッチアップ時にどのように褥瘡の創変形がおこるのかを観察した。ポケット部の配置は、臨床で多く観察される褥瘡と同様に、殿部側にポケット部を配置した。ギャッチアップの角度が大きくなるとともに創の変形も大きくなり、特に上下方向の圧縮が大きく、ポケット内部の肉芽組織に摩擦が起こっている事が示唆され、これら実験から得られた知見を論文として発表した。 臨床では基礎疾患の治療やケア、食事摂取時等ギャッチアップが必要となる場面があるが、これらギャッチアップ時の創の変形を軽減するために、仙骨・尾骨部に褥瘡を有する患者に対して、ギャッチアップをする前に患者を側臥位にし、その後にギャッチアップをおこなうというケア手法を論文として発表した。これは基本的な方法であり、臨床での適応については個々の患者の褥瘡の位置や状態、拘縮等を考慮しておこなうことが必要となる。 令和3年度では、ポケット内部の肉芽組織の摩擦の程度の観察をウレタンフォームで作成した褥瘡モデルを用いて試みた。しかし、モデルの可動性の限界や検出方法の難しさのため、現在再検討中である。一方で、診療記録からポケットを有する褥瘡のデータ分析をすすめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
深い褥瘡にみられる特異的な形態であるポケット形成は、褥瘡治療・ケアにおいて大きな問題となる。しかし、ポケットを有する既存の褥瘡に対して外力が創にどのように影響を与えるかは不明であり、褥瘡を有する患者のケアに関しては不明な点が多かった。本研究では、ポケットを有する褥瘡と外力との関係を明にするため物理学的な褥瘡―ケアモデルの構築を目指している。 実際の褥瘡に物理的特性を近似させたポケットを有する褥瘡モデルを、ウレタンフォームを用いて作成し、ファントムの仙骨部に装着し、ギャッチアップ時にどのように褥瘡の創変形がおこるのかを観察した。ギャッチアップの角度が大きくなるとともに創の変形も大きくなり、ポケット内部に摩擦が起こっている事が示唆され、これら知見を論文として発表した。 さらに、ギャッチアップ時の創の変形を軽減するために、仙骨・尾骨部に褥瘡を有する患者に対して、ギャッチアップをする前に患者を側臥位にし、その後にギャッチアップをおこなうというケア手法を発表した。 令和3年度には、創変形時のポケット内部の肉芽組織における摩擦状態の詳細を明らかにするため、診療記録からポケットを有する褥瘡のデータ分析すすめ、論文としてまとめている。今後、臨床に携わる医療者への調査を含めて、褥瘡モデルの材料をさらに検討し創変形時のポケット部の状態の可視化を目指す。また、コンピュータシミュレーションによる有限要素解析では、引き続きポケットを有する褥瘡シミュレーションモデルを用いて、内部応力分布等の解析から褥瘡ポケットの形成過程および難治化の機序を明らかにする予定である。 ポケットを有する褥瘡と外力との関係に対して、本研究の目的である物理学的な褥瘡―ケアモデルの構築において、さらに検討・調整が必要であるため「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度では、創変形時のポケット内部の肉芽組織における摩擦状態の詳細を明らかにするため、診療記録からポケットを有する褥瘡のデータ分析をすすめ、論文化する。また、臨床に携わる医療者への調査を含めて、褥瘡モデルの材料をさらに検討し創変形時のポケット部の状態の可視化を目指す。また、コンピュータシミュレーションによる有限要素解析では、令和3年度に引き続きポケットを有する褥瘡シミュレーションモデルを用いて、内部応力分布等の解析から褥瘡ポケットの形成過程および難治化の機序を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画書では、ブタ皮膚の組織染色等をおこなう予定であったが、ポケット内部への外力の影響を明らかにするために非生体材料(ウレタンフォーム)を用いた褥瘡ポケットモデルを用いた実験へと変更した。そのため、組織染色等のために予定していた人件費を使用しなかった。また、予定していた学会の開催方法がウェブ開催へ変更となったため旅費等の使用がなくなり、次年度使用額が生じることとなった。 また、褥瘡モデルに関して、実験に適した材料の再検討をおこなっており、ウレタンフォームを用いた褥瘡モデルの追加購入を見送った。 令和4年度使用予定分となった費用については、新たな褥瘡ポケットモデルの購入に使用する予定である。
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