深い褥瘡にみられるポケット形成は、特異的な形態であるとともに治癒の遅延や感染症の合併をおこすため、褥瘡治療・ケアにおいて大きな問題となっている。しかし、ポケットを有する既存の褥瘡に対して、ケアの過程で発生する外力が創にどのように影響を与えるかという視点はなく、その機序は不明であった。そのため、褥瘡を有する患者のケアの原理・原則が示されていなかった。本研究では、外力がポケットを有する褥瘡に与える影響を明らかにするため物理学的な褥瘡―ケアモデルの構築を目指している。 まず、病院の診療記録からポケットを有する褥瘡の画像データを解析し、その形態的特徴を検討した。褥瘡ポケット内部の肉芽組織表面において摩擦されたと考えられる肉芽組織の状態が観察された。 さらに褥瘡ポケット内部の外力を受けたときの挙動を可視化するために、ウレタンを用いた褥瘡モデルを作成した。褥瘡モデルを実際の高齢者の皮膚軟部組織の物理学的特性を反映させるため、物性を6段階にわけたウレタンを作成した。それを用いて、普段から高齢者ケアに従事している医療従事者に感応試験を行い、結果をウレタンの物性に反映して褥瘡モデルを作成した。これを用いた実験で、外力によってポケット内部において肉芽組織表面がポケット上部により摩擦されている事を可視化できており、臨床データとともに論文を作成中である。
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