グリセリン浣腸は、直腸穿孔や損傷、さらに穿孔部や損傷部から浣腸液が血管内に移行し、溶血、血色素尿、腎機能障害に至る有害事象が問題となっている。そして、グリセリン浣腸に摘便を併用することで、有害事象に至るリスクが上昇することが指摘されてきた。しかし、高齢者は便秘傾向となりやすく、在宅では介護負担軽減のために要介護高齢者に対して看護師が訪問時にグリセリン浣腸や摘便によって便を出している状況がある。そこで、本研究では有害事象を起こさずにグリセリン浣腸や摘便によって便を出すにあたり必要なアセスメントと実践を示したフローチャートと、有害事象を起こさないポイントを示した実践の手順からなる看護実践モデルを構築することを目的とした。 2018年度(研究期間1年目)には、第1研究において看護実践モデル案を作成するのに必要なデータを収集し、第2研究において作成したモデル案を文献検討により修正するところまで至った。2019年度(2年目)では、第2研究の最終段階である、直腸から肛門部の形態の有識者である解剖学者、訪問看護師に看護実践モデル案の検討を依頼し、安全面、使用面から修正を行い、看護実践モデルを完成させた。また第3研究において、看護師10名が在宅用介護高齢者10名に看護実践モデルを使用してモデルの評価を行い、修正を加えた。 以上の研究を経て完成したフローチャートは、食事摂取状況、腹部や肛門、直腸内のフィジカルアセスメントなどのアセスメント 10 項目と グリセリン浣腸、摘便、肛門管刺激などの実践により構成さている。この看護実践モデルに沿ってアセスメントと実践を行う事により、グリセリン浣腸による有害事象を予防しながら高齢者を安全に排便に導くことができる。そして、看護における排便を促進するアセスメントおよび実践の技術の水準を向上させる一助となると考える。
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