研究実績の概要 |
本研究は、高齢者の日常生活ケアに従事する看護職と介護職が、高齢者の日常生活場面でそれぞれ何を観て、何を考えケアに活かしているのかを眼球運動計測を用いた視線運動データの分析によって各職種の視線の特徴を明らかにすることを目的としている。 熟練の看護職者9名、介護職者9名、一般人8名の計26名を対象に、高齢者の「歩行」「ベッド移動」「食事」「洗面」等の生活場面(以下、各日常生活場面)の静止画像(研究者制作)を眼球運動測定機(Talk eye free,竹井機器工業)を用いて、実際に高齢者と関わる際にどこに視線を送っているのかの測定を行った。得られた眼球運動測定データを眼球運動再生プログラムversion4.0、および任意領域解析処理プログラム(以下、解析プログラム)を用いて、視線解析を行った。 画像解析では、高齢者の各日常生活場面で、視線を向ける必要のある箇所をターゲット領域として設定した。例えば、〈歩行〉場面では「頭・顔」「足もと」「手もと」「進行方向道路」、〈食事〉場面では「顔・口もと」「姿勢」「手もと」「足もと」「食事膳」などである。解析プログラムを用いて、各ターゲット領域に視線を向けた〈視線回数〉、視線を停留させた〈注視時間〉を解析した。合わせて、〈視線の軌跡描写〉〈視点のヒートマップ〉を解析した。〈視線回数〉〈注視時間・回数〉については、各被験者群で比較した。ターゲット領域への〈視線回数〉については、看護職、介護職ともに転倒や転落等の事故の発生を察知できる「足もと」の領域を中心に視線を多く送る傾向があることが明らかとなった。特に、介護職にその傾向があった。また、被験者からは〈注視回数〉がない場合でも〈視線軌跡〉ではターゲット領域を中心に〈視線回数〉が得られており、ターゲットへの観察は〈注視〉よりも短時間での視覚的注意により行われていることが明らかとなった。
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