健康寿命の主な推定方法であるサリバン法では、1.2万人以上の人口規模の自治体単位でしか算出することができないため、より住民個人の健康を反映した指標として他の推定方法についても検討したが、個人単位での推定は困難であった。また、健康寿命を算定するための基礎資料は、政府調査に依存するため3年毎にしか算出できない課題もあるため、健康寿命と関連のある寿命(死亡)や主観的健康感をアウトカムにした個人レベルでの要因分析を行った。 主観的健康感については、2018年にその判断要因に関するインタビュー調査を実施し、子育て中の若年期がメンタルヘルスを中心に、健康に課題を持っているという傾向にあった。そのため、日本版総合的社会調査(Japanese General Social Surveys)の既存データを二次利用し、分析を行ったところ、主観的健康感を用いて算出した健康寿命とメンタルヘルスとの関連は認められなかったが、主観的健康感とメンタルヘルスは有意な関連を認めた。すなわち、若年世代は健康寿命への影響は小さく過小評価されているが、主観的健康がよくない傾向にあることが明らかとなった。 また、単年度毎に事業の評価や予算編成を行う行政組織において、健康寿命をより有用な指標とするためには、タイムリーに政策評価ができる必要があるため、WEB上のログデータと健康指標の関連について、住民のインターネットでの検索動向と地域の脳卒中の年齢調整死亡率との関連を評価し、予測可能であることが示唆された。 今後、行政による政策評価指標としての健康寿命を用いるにあたり、住民の主観的健康感、要介護度などの下位指標とともに複合的に判断することやタイムリーに取得可能なデータを組み合わせた代替指標の開発が望まれる。
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