研究課題
本研究の目的は,戦中から戦後,現在にわたる島根県の公衆衛生活動,とりわけ地域で実施されてきた脳卒中対策の歴史を概観することである。加えて,島根県各地区で実施されてきた地域独自の脳卒中対策(脳卒中特別予防対策や重点地区活動など)と地域住民の死亡率・発症率との関連を明らかにする。本研究は,歴史資料や保健師による活動記録を用いた文献調査,保健統計資料を用いたデータ分析,当時の保健所・保健師を対象としたインタビュー調査から成り立つ。本年度は,脳卒中特別対策事業が実施されていた当時の保健所および保健師の関係者にインタビュー調査を実施し,市町村-保健所間の連携状況や実際の地域住民の様子等を明らかにする予定だったが,新型コロナウィルス流行下における高齢者を対象としたインタビューは,感染リスクを高める可能性もあり,調査実施は延期を余儀なくされた。文献調査は引き続き実施したが,国内移動の制限もあり,遠方の資料の取り寄せや移動を伴う調査の実施もまた中断せざるを得なかった。本年度に予定していた調査の多くは,計画通りに進まなかった。それに従い,本研究期間を延長し,来年度も引き続き本研究課題に従事する。国内外での研究報告に関しては,申請者が所属する学会のうち,オンライン開催が実現した学術集会での研究報告を実施した。本研究課題に関連する島根県の地域住民を対象とした健康実態に関する調査や本研究課題の遂行に重要となる研究方法論に関する報告を実施した。国際大会は,一時延期となったため,来年度以降に報告できる予定である。
3: やや遅れている
戦後における地域保健活動の中核を担っていた保健所関係者にインタビュー調査を実施することを研究計画の中核としていたが,コロナ禍における高齢者への訪問を控えざるを得なくなった。高齢者を対象としていることもあり,大半の協力者はウェブ会議システムを用いた調査なども断念せざるを得なかった。また,地域で固有に所属している文献の取得なども一部中断せざるを得なくなったため,研究計画通りに進捗しているとはいいがたい。また,研究計画の一部は実施を断念せざるを得ず,あらためて研究計画を立て直す必要がある。
当初は本年度で終了予定だった課題であるが,研究期間を延長するための手続きを実施し,承認されたため本年度も継続して本課題に従事する。新型コロナウィルスの影響が収束に向かうようであれば,高齢者を対象としたインタビュー調査を再開する。コロナ禍における影響に最大限配慮し,国や保健所から発せられる情報に基づいて状況に応じて適切に判断したい。インタビュー調査の実施が困難な場合には,保健統計資料や歴史文献調査を中心とした実践史研究を引き続き実施する予定である。
本研究は新型コロナウィルスの流行により,既定の研究期間から期間を延長して研究課題を継続的に実施する。それにしたがい,本年度実施予定となっていたインタビュー調査や文献調査に必要となる諸経費(旅費や謝礼などが含まれる)を執行する。また,国内外の学会での研究報告や遠方に保存されている文献資料の収集などの調査旅費も,感染症の動向を見据えながら,旅費や印刷等必要経費として計上する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
Alchol
巻: 93 ページ: 57-62
10.1016/j.alcohol.2020.11.005
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