研究課題/領域番号 |
18K17639
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
古野 貴臣 佐賀大学, 医学部, 講師 (90775363)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 認知症看護 / アパシー / 看護実践 |
研究実績の概要 |
無気力や意欲低下を示すアパシーは認知症患者のBPSDの中でも特に生じやすい。一見手がかからないため見逃されやすいことが指摘されているが,食事低下や活動量低下に伴うBPSD悪化や廃用性症候群などを引き起こす恐れがある。本研究は,アパシーのある認知症患者に対する,認知症看護の熟練者による看護実践の現状を明らかにする。認知症看護に関連する認定資格の認知症看護認定看護師および認知症ケア専門士を対象者とした。施設管理者に研究内容の説明を行い,対象者の紹介を受けた。「アパシーのある認知症患者に対する看護実践」の観点から,半構成的面接によるインタビュー調査を実施した。データはボイスレコーダーに録音し,逐語録を作成した。文脈ごとに切片化し,看護実践を示す内容をコード化した。コードの類似性と共通性からサブカテゴリおよびカテゴリを生成した。本研究は,佐賀大学医学部倫理審査委員会の承認を得ている(承認番号:R1-31)。対象者の自由意思に基づき,文書および口頭での研究説明を行い,文書による同意を得た。データは匿名化し,個人情報保護に努めた。対象者は,認知症看護認定看護師3名,認知症ケア専門士5名であった。年齢の中央値±SDは47.5±6.4歳。看護師経験年数の中央値±SDは24.0±11.9年だった。アパシーのある認知症患者に対する看護実践に関し,〔ストレングス志向〕〔エンパワメントアプローチ〕〔生活史の重視〕〔その人の意向の尊重〕〔信頼関係構築に向けた姿勢〕〔療養環境の調整〕〔アパシーの対処〕の7カテゴリが生成された。アパシーのある認知症患者に対して,精神保健的実践を行っていることが示された。また,パーソンセンタードケアアプローチのような認知症ケアで説明が可能な内容であり,本結果の信頼性が確保できたと判断する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の感染拡大予防のため,インタビュー調査の実施が遅れた。そのため,研究期間を1年間延長している。現時点で,全国調査の基礎研究である,インタビュー調査は終了している。この結果に基づき,全国調査の質問項目を設定する準備を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
現在,全国調査に向けた基礎データの収集を終えた。質的研究から得られた結果に基づき,項目を設定し,認知症看護に関する新たなケアモデル開発に向けた量的研究を行う予定である。現在,対象施設の選定および併存妥当性検証の尺度の検討を行っている。質問項目の設定後,全国の認知症病棟で勤務する看護師に対し,郵送法による無記名自記式質問紙調査を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19による感染拡大のため,インタビュー調査が一時中断した。そのため,当初の予定から研究の進捗が遅れている。次年度は,インタビュー調査を基盤とした全国調査を行う予定である。そのため調査用紙印刷,データ整理に係る人件費,郵送費などを計上する予定である。
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