研究課題
本年度はリプロダクティブ世代の在住外国人支援を検討するために、総合周産期母子医療センターで出産した在住外国人妊産婦のデータから、国籍別での周産期に関連する実態を明らかにし、また日本人との比較検討から在住外国人の特徴を明らかにした。特に近年アジアからの外国人が増加しているが、アジア出身の外国人は日本語も英語も母国語ではない。我々の調査からは日本語が「少しは理解できる」と「全く理解できない」で約4割を占めていた。言語的コミュニケーションがうまくいかないと、異常妊娠、異常分娩が増加するという報告もあり、在住外国人が多く来院する周産期施設では言語対応が必要であることが示唆された。また、国籍別では中国、ベトナム、フィリピンの順に多く、国籍別特徴として、非妊時BMIと妊娠中の体重増加がフィリピン人で最も多く、妊娠中の健診を定期的に受診していない者や喫煙妊婦もフィリピン人で多かった。これらの背景や特徴を考慮した上で、丁寧な個別指導の必要性が示唆された。また、妊娠中の体重増加に関して、日本産婦人科学会ガイドラインと世界で広く使用されているInstitute of Medicine(IOM)ガイドラインの推奨体重増加基準と分娩様式、分娩時出血、児体重について、外国人と日本人別で検討した。結果、日本のガイドラインに沿った推奨体重増加との関連では、外国人、日本人共に、推奨体重増加群、過剰群、過少群の3群間で、分娩様式、分娩時出血に有意差はなかったが、IOMガイドラインに沿った分類では、外国人でのみ分娩様式に有意差を認めた。一方、児体重および在胎別出生時体格基準は、両ガイドラインで、外国人、日本人共に有意差を認めた。ここから、外国人妊婦にはIOMガイドラインに沿った保健指導の必要性も示唆された。今年度は、これまで得た知見をもとに、在住外国人妊婦への特徴に応じた保健指導について検討する。
3: やや遅れている
コロナの影響もあり、予定通りの研究活動ができなかった。研究施設への立ち入りの制限、臨床の研究協力者の協力を得ることも困難であった。
データの解析、考察までできたことから、在住外国人の特徴は明らかにできている。今後は特徴に応じた実際の保健指導内容について検討する。研究施設の状況も踏まえ、施設の研究協力者と協働しながら、実際の保健指導について検討する。「在住外国人の保健・医療を考える会」として、在住外国人支援を行っている教員や臨床家などと年に6回の研究会を開催し、在住外国人支援に関連する様々なトピックスについてディスカッションや学習をしながら、今後に活かす。
研究遂行が遅れていることから次年度使用額が発生した。コロナ禍で国際学会も国内学会もオンデマンド開催になり、出張することに規制がかかっていたりしたことから、旅費をほとんど利用していないため。
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