研究課題/領域番号 |
18K17648
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
大内 みふか 北海道医療大学, リハビリテーション科学部, 助教 (60758548)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 骨盤底筋トレーニング / 男性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、脳血管障害発症後尿失禁を有する男性患者において、尿失禁に対する複合的骨盤底筋トレーニングが尿失禁症状及び生活の質(Quality of Life:QOL)の改善を促進させる効果を明らかにすることで、男性において脳血管障害発症後の骨盤底筋機能回復を促進させるためのリハビリテーションプログラムの基盤を構築することである。本研究では、「脳血管障害発症後の尿失禁患者に対する骨盤底筋トレーニングは、症状緩和及びQOL改善を促す。」と仮説を立てた。仮説検証のために、下記の2項目の研究を実施する。①骨盤底筋機能の再獲得。保持を促進させる骨盤底筋トレーニングの最適な条件を探索する。②骨盤底筋トレーニングに伴う骨盤底筋機能改善とその他の運動を併用した場合の効果を比較する、2項目の研究を計画している。申請者は、男性の脳血管障害患者の骨盤底筋機能回復を促進させるリハビリテーションプログラムの開発を目指し、その方法として電気刺激を用いた骨盤底筋トレーニングと膀胱トレーニングの併用による尿禁制回復の促進効果を明らかにする。加えて、男性に対する骨盤底筋トレーニングのモデルとして、骨盤底筋収縮練習を実施している。これまでの中高齢男性を対象とした予備的研究により、次のような知見を得ている。 骨盤底筋トレーニングの直接的な効果である骨盤底筋の筋力を、直腸圧を用いることによって、最大骨盤底筋収縮力である最大直腸圧及び、直腸圧を経時的に評価する曲線下面積を測定することによって、骨盤底筋筋力を多面的に評価する。骨盤底筋の特徴として視覚的に捉えにくい筋肉であるため、トレーニングをする際には正しい収縮ができるかどうかを確認し、理解することが必要である。電気刺激を用いた骨盤底筋トレーニング及び膀胱トレーニングを併用することによって、脳血管障害発症後における尿禁制回復の促進に貢献する可能性が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度は健常男性の肛門直腸圧測定の検者内及び検者間再現性を検討した。腟圧プローブを用いた腟圧測定によって、腟圧測定は骨盤底筋最大収縮力や持続力を表す指標として女性の尿失禁患者において使用されてきた。「骨盤底筋の筋力は、おしっこを締めるように、できるだけ強い力で尿道、腟、肛門を締めてください。」との口頭指示後に、被検者自身が随意的に骨盤底筋を収縮させる時の腟圧を測定する。男性においては、腟圧測定の代替として肛門直腸圧を測定する。本研究においても、研究計画立案時より、肛門直腸圧を用いることによって、最大肛門直腸圧及び、経時的に評価する肛門直腸圧の曲線下面積を測定することを検討している。しかしながら、男性における肛門直腸圧の測定に関しては、信頼性が得られておらず、信頼性の検証が必要であると考えた。そのため、2018年度は健常男性に対して肛門直腸圧測定(最大肛門直腸圧、収縮持続時間、平均肛門直腸圧、最大収縮時間までの速さ、肛門直腸圧の曲線下面積)の検者内及び検者間信頼性の検討を実施した。本検討においては、2019年5月10-13日までに開催されたWorld confederation for Physical Therapyにおいて、Women’s and men’s pelvic healthセッションのPlatform Classic(口述演題)に選出され、5月13日月曜日、10:45-12:15@RoomFにて発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、当初の対象者としては脳血管障害後の男性に対する骨盤底筋トレーニングの施行を計画していた。しかしながら、計画がやや遅れており脳血管障害後の男性患者の取り込みが難しいことが予想される。そのため、本年度は男性における尿失禁が最も頻繁に見られる前立腺癌全摘除術後の患者における骨盤底筋トレーニングの実施を検討している。前立腺癌全摘除術後の研究への組込みに関しては、共同研究者である北海道大学泌尿器科の橘田岳也医師に依頼し、組込みが始まっている段階である。前立腺癌全摘除術後の患者数は、年間30名~40名程度であり、本年度の組込みも例年と同様に予想される。 前立腺癌全摘除術後の患者に対する干渉波治療機器の利用は安全性の確証がえられておらず、治療機器の使用が難しい可能性が考えられる。そのため、介入は理学療法士による個別の骨盤底筋トレーニングを検討している。その場合は、肛門直腸圧のバイオフィードバック機器、筋電計を用いた評価とともに、より詳細な骨盤底筋機能について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度(初年度)に使用予定していた予算の施行が難しかった。理由としては、当初計画していた臨床介入研究に用いる計測機器である肛門直腸圧計の検者内及び検者間信頼性を検証する必要があったためである。今後は、より対象者の心理的負担の少ない肛門直腸圧計を用いたバイオフィードバックによる指導及び、筋電計を用いて骨盤底筋収縮機能の詳細を検討することを計画している。
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