本研究は、認知症家族介護者に対する電話を用いた認知行動療法プログラムを開発し、プログラムの有用性を検証することを目的としている。 2021年度は、前年度から引き続き対象者の選定、認知行動療法を用いた介入を対象者に行った。その後、研究期間を通して得られた認知症家族介護者11名のプログラム開始時(Session1)、終了時(Session6)、追跡調査(3か月後)のデータ分析を行った。量的データはSPSSを用いた統計処理を行い、質的データKrippendorffの内容分析の手法を用いて分析した。質的データを定量的に捉え、形態素解析、コロケーション解析にはKH Coder3解析ソフトを使用した。開始時と終了時の比較において、アンケートを用いた量的研究は、うつ得点が有意に減少した(p<.05)。うつ状態の改善には自己効力感の下位項目である「行動の積極性」にはたらきかける必要性が示唆された。また、半構造化面接を用いた質的研究では認知症介護者は介護の継続には【快活動の継続】が重要であると気づき、【自己の客観視】を行うことで気分の安定に繋げていることが明らかになった。 本研究結果は、学会誌に投稿予定としている。 本研究を通じ、認知症家族介護者への電話を用いた認知行動療法の効果には一定の知見は得たものの、本研究は介入群のみの単群前後比較であること、追跡調査では自己効力感と自尊感情得点は向上したが終了時には低下していること、さらにはパイロット研究という観点からも、修正プログラムの検討・実施に繋げる必要性が考えられた。
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