今年度は3年目の最終年度として次のように実施したが、特殊な事情として、2020年3月から始まったコロナ感染症の拡大に伴い研究対象施設は家族・外部者の入構禁止となった。研究者も例外ではなく打ち合わせのみは玄関ホールまで、カルテ・電子機器からの情報収集時は看護ステーションまでとなり入居者とは一切接触できなくなった。また、入居者の家族も面会できず同意書の取得が困難であるため、新規調査対象入居者のリクルートがほとんどできなかったことから、継続入所されている高齢者を中心に施設の看護師長に依頼して継続していった。家族の面会禁止や、外出の制限、行事の縮小からADLがある程度自立している認知症入居者は精神的に不安定になりがちであるため、調査機器を付けることは不穏の原因になると判断した。そこで認知症フロアでの調査は断念し、寝たきりの高齢者を中心に、看護師長の負担とならない程度のペースでデータを収集するように計画を修正した。最終的に10例余りの小型超音波機器による排尿動向データを収集することができた。1例1回とは限らず、間隔を空けて2回程度行うことを目標とすることで排尿パターンの分析が容易になった。2年目までに小型超音波装置の装着方法や固定方法、充電式乾電池による長時間動作の保障など課題を全てクリアしていたため、調査対象となった入居者にトラブルはなく、看護師長が手技に熟練したため、膀胱の的確な描出やテープ固定を素早くできるようになり、作業負担は入居者・看護師双方にかからなくなった。看護師が手技に熟練するに連れて施設内でおむつ交換などの共同作業を行う介護スタッフにも超音波による膀胱の観察は「自然な看護師の観察業務」と認識されるようになり、介護スタッフ自ら「おしっこ(膀胱)の所を(超音波器で)見なくていい?」といった声かけが看護師にされるようになった。調査は2021年3月を以て無事終了した。
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