研究実績の概要 |
2019年度は、第2回世界精神保健調査日本調査のデータを用いて早発初潮と幼少期の社会経済的要因の関連について検討を行った。その結果、回答者の平均初潮年齢は13歳で、早発月経のあった者は4%(n = 52)であった。ログランク検定の結果、早発月経ありの者で有意に大うつ病の発症率が高かった(p < 0.001)。年齢で調整したコックス比例ハザードモデルでも、早発月経のあった者は、そうでない者に比べて大うつ病発症のリスクが有意に高かった(モデル1: HR = 2.74, 95% CI = 1.27- 5.92, p = 0.010)。この関連は、幼少期のトラウマ体験、および早期成人期の社会経済的要因で調整したモデルにおいても維持された(モデル2: HR = 2.84, 95% CI = 1.29-6.27, p = 0.010; モデル3: HR = 3.15, 95% CI = 1.41- 7.06, p = 0.005)。これらのことから、早期に初潮を迎えた女性では、大うつ病発症のリスクが高まることが明らかになった。本研究では、幼少期のトラウマ体験や早期成人期の社会経済的要因による媒介効果は確認できなかった。今後は、神経系に対するホルモンの影響など、生物学的な要因についても検討していく必要があることが示唆された。一方、年齢と初潮のタイミングには強い関連があるため、統計的な調整では不十分だった可能性がある。また、サンプル数の少なさから、性的虐待などの影響を十分に評価できなかった可能性がある。そのため、大規模なバースコホートを用いたさらなる検討が必要である。2020年度は、英国のコホートデータを用いた解析を行う。 上記の成果は、第78回日本公衆衛生学会総会にて口頭発表した。また、国際誌での公表に向けて準備を進めている。
|