第一段階として、虐待の予防・子育て支援を目的とする地域資源の利用実態と、利用と養育者の背景の関連について質問紙調査を行った。第二段階として、養育者の「社会的孤立」に関する文献検討の結果を踏まえ、利用実態や養育者の背景と社会的孤立の状態、孤立に関連するとされる各因子との関連について質問紙調査を行った。その結果、近所に顔見知りを増やし、彼らへの信頼感を築く支援を基盤とし、ヘルスリテラシーやSense of coherence/SOC等関連因子獲得への支援が必要と考えられた。 最終年度にはさらに文献検討を行い、被虐待体験による愛着外傷、低いレジリエンスなどが「虐待の世代間連鎖」に関連し、レジリエンスを獲得することでその体験を克服し得ることが明らかになった。レジリエンスに寄与する要因にソーシャル・サポート、親以外の成人との親密な関係等が挙げられており、「他者から受け入れられる体験を重ねることによる安心感や安全感、自己肯定感の養成」「親以外の地域の他者との肯定的な人間関係の構築」などのレジリエンス獲得への早期からの支援が、児童虐待被害者の社会的孤立や虐待予防に重要と考えられた。 そこで第三段階として、児童虐待被害者の養育経験のある里親を対象に、インタビュー調査を実施した。その結果、措置期間中の里子の問題、措置解除後の地域での生活に向けた養育上の工夫、必要と考える里子と里親への支援や制度が明らかにされた。里子が抱える問題には、低い他者への信頼・SOC・被援助欲求、ソーシャル・スキルの問題、生活体験不足に起因する問題、トラウマの問題等が示された。養育上の工夫には、レジリエンス獲得に関連する内容が含まれ、社会的孤立を予防する取組が表された。また、我が国の制度や支援体制の課題も明確にされ、児童虐待被害者の社会的養護モデルを作成した。このモデルは、児童虐待被害者以外にも適応できると考えられた。
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