研究実績の概要 |
幼児期の姿勢運動制御の発達については客観的な指標を用い検討された報告は非常に限られている.本研究では基礎的データの蓄積を目的に定型発達児における歩行,片脚立位の姿勢運動制御の発達変化を明らかにすることを目的とした.当初はさらに,発達性協調運動障害のハイリスク因子とされる早産児と定型発達児を比較することで,早産児の姿勢運動制御の発達上の問題を明確化することを目指していた.2019年度までは定型発達児および早産児を対象にデータ収集をおこなった.2020年以降の新型コロナウイルス感染症パンデミックでは,早産児(患者)を対象としたデータ収集が十分に行えず,統計解析に耐えうる症例数の蓄積はできなかった.最終的に3-10歳の定型発達児112例,早産児5例のデータを計測した.最終年度は定型発達児のデータで,小児期の姿勢運動制御の発達について検討を進めた. 我々は前年度までに歩行能力を5つの機能(Pace, Variability, Rhythm, Asymmetry, およびPostural control)(Galna et al., 2012, 2015)に分類し,発達の傾向を検討した.この5つの機能と歩行の安定性との関連を検討した.歩行の安定性の評価には,倒立振子モデルに基づく動的なバランス指標である推定質量中心位置 (XCOM: extrapolated center of mass) を用い,検討した.直進歩行は7歳までに成人と同等のレベルに達することを明らかとした.目標の方向へ直進する能力は,安定性の他にPaceが関与する可能性が明らかとなった.自らの進行方向に対して直進する能力は,安定性に加え,Symmetryが関与する可能性が示された.歩行の安定性に関連する機能を明らかにしたことで不安定な歩行を呈す児のリハビリテーションの一助となることが期待される.
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