研究課題/領域番号 |
18K17679
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
国分 貴徳 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (10616395)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 前十字靭帯 / ACL / 保存的治療法 / 損傷部位 / 適応 |
研究実績の概要 |
前十字靭帯損傷(Anterior Cruciate Ligament: ACL)に対する保存的治療法の確立を目指し、これまでに申請者が開発・確立したACL損傷の自己治癒モデル動物を対象として、損傷部位の違いが治癒反応に影響を及ぼすかについての検討を行った。 これまでの我々の研究成果により、完全損傷したACLが損傷後に生じる異常な関節運動を制動した一定の条件下においては、保存的に治癒することは実験的には立証されている。本研究では我々の保存的治療法が適応となる患者基準の確立へ向けて、今年度は損傷部位の違いに着目した。ACLの大腿骨近位部と中央部は、これまでの先行研究において細胞活性が異なると報告されており、この細胞活性の違いは我々の保存療法の成績に影響を及ぼすのではないかと仮説を立てた。そこで、これまでのモデルである中間部を損傷させるモデルに加えて、大腿骨近位部で損傷させるモデルを作成し、それぞれのモデルの治癒反応について、組織学・生体力学的手法を用いて解析した。その結果,これまでのACL中間部損傷に加え、大腿骨近位部損傷においても同様の介入により自己治癒し、その力学的強度についても同等レベルであった。臨床上、ACL損傷患者の約95%が大腿骨近位部あるいは中間部のいずれかの部位で損傷していることが報告されており、今回の成果は、ACL損傷に対する我々が確立を目指している保存的治療法は、損傷部位を問わず適応される可能性を示唆した。 これに加えて、今年度は損傷からの治癒メカニズムを明らかにするための実験にも着手した。従来までにおいてACL損傷に対する我々の保存的治療法に対しての批判的な意見として最も多いものに、「ACLには“Scaffold(鋳型)”がないから保存的に治癒しない」という意見がある。これを否定しうる根拠を明らかにすべく新たな実験を開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り、ACL保存療法の適応基準の解明のために行った、損傷部位による保存的治療法の成績の違いについての実験が完了したことに加えて、新たに損傷からの治癒メカニズムの解明に関する実験に着手した。こちらについても、見通しの立つ成果が得られてきており、上記の評価と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、我々が開発を進めているACL損傷に対する保存的治療法の確立へ向け、1)保存的治療法が適応となるACL損傷患者の初期スクリーニング基準の確立と、2)ACLの自己治癒を促進するリハビリテーション基準データの取得を目標としていた。2018年度において、1)については一定の成果上げることができた。今後は2)についてのデータを提示するため、ACL損傷の治癒過程を明らかにすることを目的としている。そのためにはこれまでとは異なる新たなアプローチが必要と感じていたが、2018年度後半から新たな実験を開始できており、継続して推進していくことで、当初の目的以上の成果をあげることができるのではないかと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
極わずかな使用残が生じた。
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