研究課題/領域番号 |
18K17687
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
太田 大樹 帝京大学, 医療技術学部, 助教 (10712432)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 痛み / 侵害受容器 / 交感神経 / 非活動性侵害受容器 |
研究実績の概要 |
骨格筋由来の痛みは極めて高い頻度で発症し慢性化しやすい病態であり、多くの日本人を悩ませており、この病態機構解明と治療に向けた基礎研究はわが国において急務である。しかし、皮膚など他組織に比べ、著しく研究が遅れている。本年度は、骨格筋疼痛の根本治療に向け、近年他組織でその存在が確認され始めている「非活動性侵害受容器」も含めた、新たな骨格筋侵害受容器分類法の確立を目的とし、以下の実験を行った。 ①正常ラットにおいて、骨格筋神経の機械刺激応答性を測定した。さらに、神経に対する繰り返し電気刺激による軸索特性を調べた。その結果、約2割が機械刺激応答神経、約2割が非活動性侵害受容器、約6割が交感神経と推定された。また、非活動性侵害受容器と考えられる例の骨格筋に炎症惹起スープを投与したところ、一部で新たな機械刺激応答性の獲得が観察された。さらに、交感神経幹を直接電気刺激することにより、骨格筋に分布する交感神経の電気生理学的特性を裏付けることができた。以上より、骨格筋神経には確かに非活動性侵害受容器が分布すること、骨格筋神経の多くが交感神経であることが明らかとなった。 ②神経成長因子筋注ラットにおいて、実験①と同様の解析を行った。その結果、正常ラットと比べ各神経の割合に大きな差異は見られなかった。一方で、軸索特性においては差異が認められた。 ③骨格筋神経細胞体を逆行性トレーサーにより標識した上で、「非活動性侵害受容器」分子マーカー候補の発現を免疫組織化学的手法により調べた。現在データを蓄積中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
免疫組織化学実験は条件検討が難航し想定よりも時間がかかったが、その条件検討はおおむね終了し、新たなデータを蓄積しているところである。一方、電気生理実験については新しい知見が得られ出版準備に取り掛かっており、全体としておおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、特に免疫組織化学的実験におけるデータの蓄積を行う予定である。さらに、従来の神経マーカーとの共局在度や、病態ラットにおける分布の差異も検討し、学術雑誌への論文投稿や成果公表に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:当初、人工呼吸器、麻酔器を予算に計上していたが、麻酔器については、平成31年4月1日より研究代表者所属機関変更に伴い、変更先の研究機関で機材共有が可能となる目途が立ったため購入を取りやめた。一方、人工呼吸器は老朽化が著しいものの、何とか機能していたため使用を続け、購入しなかった。よって、それらの購入予算が次年度使用額として発生した。 使用計画:次年度は、人工呼吸器の購入を検討している。また本年度、免疫組織化学実験における条件検討が難航したこともあり、次年度は抗体類の追加購入を行う。その他は、ほぼ計画通りに使用している。
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