本課題の目的は、新たな神経タイプである「非活動性侵害受容器」に焦点を当て、電気生理学的ならびに免疫組織化学的アプローチを用いることで、新たに骨格筋侵害受容器を分類することである。そのために、(1)完全フロイントアジュバント(CFA)筋注による筋炎症モデルラットにおいて、骨格筋神経の活動記録を電気生理学的手法により直接行い、その電気的活動特性と骨格筋への刺激応答特性から、骨格筋侵害受容器タイプの正常ラットとの差異を調べた。(2)近年他組織において見つかっている「非活動性侵害受容器」特異的なマーカー因子CHRNA3が、骨格筋神経にも発現するか、蛍光色素と抗CHRNA3抗体を用いた免疫組織化学的手法により調べた。 その結果、①筋炎症下の骨格筋神経における「非活動性侵害受容器」の特徴を持つ神経タイプの割合は正常動物の割合よりも少なかったが有意な差異は認められなかった。②「非活動性侵害受容器」特異的なマーカー因子CHRNA3の発現は、感覚神経細胞体の集まる後根神経節(DRG)のうち骨格筋神経細胞体でも確認された。③CHRNA3はペプチド性神経細胞体においても発現が確認された。 以上の結果から、「非活動性侵害受容器」特異的なマーカー因子が骨格筋神経に発現することが明らかとなり、これまでの電気生理学的アプローチによる存在実証を支持する結果となった。一方、骨格筋神経タイプの変化は病態下で変化せず、皮膚での報告と異なる結果となった。 本課題で得られた知見は、他組織に比べ解明が遅れている骨格筋疼痛における末梢の発症メカニズムの一端を解明する成果である。
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