研究課題/領域番号 |
18K17690
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研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
間宮 靖幸 新潟医療福祉大学, リハビリテーション学部, 助教 (90804302)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | DLB / 幻視 / 視覚性注意 |
研究実績の概要 |
DLB (dementia with Lewy bodies) とAD (Alzheimer's disease) を対象として日常風景の視線探索時の視線データを評価して,疾患によって視線探索のパターンに違いがあるのかを明らかにする.DLB24 名,AD12 名を目標にリクルートを行い,インフォームド・コンセントが得られた被験者から実験を実施した.その際に被験者の情報として,年齢,性別,教育歴の情報を収集した. 実験手順としては,被験者情報を収集した後,近見視力表を用いて近見視力を計測した.また両群の疾患の重症度や視知覚機能を評価するため神経心理学的検査を実施した.疾患の重症度はMMSEを用いて評価を行った.視知覚機能の評価については,VOSPや標準高次視知覚検査 (VPTA) の一部評価項目を実施した. 両群の幻視の有無,およびそのほかの精神症状を確認するため全例にNeurophychiatric Inventory (NPI)に妄想の項目を「被害妄想」と「誤認妄想」とに分け,「認知の 変動」の項目を追加した12 項目のNPIを実施した.また幻視の代用マーカーとなるパレイドリアテストの風景テストとノイズテストも実施した. 現在,DLB25名,AD12名のデータ収集を終えて,その分析を行っているが,その分析方法について適切な方法を検討している.こちらが想定した方法では,視線データを多角的に分析できない可能性があるため,他の方法であったり,注視時間の基準を変更して分析を行っている.また新たな機器の購入も検討しており,それに向けた機器の選定や解析ソフトについても検討を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験データの分析方法を,また新たに検討しているため,当初より時間がかかっている.またその解析方法についても,過去の研究においてどのような解析方法があるかを洗いなおしている(医学的見地だけでなく,実験心理の研究も含めて検討している).主に注視時間の設定と視線データの取得割合について,患者研究のため設定が難しい.認知症の視線データとなると,眼球運動や目の状態(白内障の有無,近見視力の低下)なども影響し,十分視線データを取得できないときもある.それら要因の影響を極力受けない分析方法を検討している.追加でデータを取得する可能性も考慮しているが,現在はその必要はないと考えている.しかし,前述した要因もあり,十分な視線データを取得出来ていない被験者データを使用して良いかどうかも考慮している. また,パレイドリアテストについて,現在風景テストよりもノイズテストが一般的に使用されている現状がある.様々な要因があり,ノイズテストのほうが使用しやすいということもあるが,臨床上の有用性を考えたときにそちらの研究も進める必要があるかと思われる.現在の研究は風景テストを基準に立案されたものであるため,この研究と平行してノイズテストを基準とした研究も進められるかどうか,検討を行っている. 新たな機器の選定についても,予算との兼ね合いでやや難航している.視線データ取得の機器自体は購入可能だが,視線データ解析ソフトを含めると購入が難しい.解析ソフトにより,分析できるデータや統計処理が異なる場合があるため,注意深く選定を進めている.販売企業においても,様々な進展があり,機器と解析ソフトのセットで購入可能かどうか検討している.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方策としては,引き続き実験データの整理及び精査が必要であるが,どちらかというと解析方法の選定が必要と考える.被験者が実際の患者であるため,様々な要因が関係する可能性がある.また認知症という診断が難しい症候群を対象としているため,患者の経過により対象者条件から外れる可能性がある.具体的には眼の状態や近見視力といった要因で,取得した実験データ,背景情報,神経心理学的検査結果について使用が適当かどうか整理と精査が必要である. 実験データについては,経時的側面と空間的側面の両面を念頭に解析する必要があるが,経時的側面を今後検討していく必要がある.空間的側面は解析ソフトによるところが大きいため,追加購入も含めて検討していく必要がある.また今回風景上のパレイドリアと いう現象を追跡するため,実験中にその現象が発生した時間や位置のランドマークを付けが難航している.その作業も急ぎ行う必要がある. 幻視の有無やコリンエステラーゼ阻害薬の有無についても検討する必要があるが,まずは解析方法を再度検討することを優先して取りかかる予定である.解析方法が決定次第,データの整理を今一度検討する必要があるため,こちらも急ぎ取り掛かる予定である. 今後,より周波数を多いアイトラッキング機器を購入することにより,視覚性注意のメカニズムに迫る.こちらは新たな機器と解析ソフトの選定が必要であり,購入予定の企業と検討する予定である.脳波については機器の選定が難しく,NIRSといった脳機能測定装置の使用も検討している.これら機器と視覚性注意および幻視との関係性を研究できればと考えている. 解析方法の選定,機器の購入や実験プロトコルの確立,もし追加データを取得する場合は病院の協力などが必要となるため,これらの準備を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
現在,新しい機器と解析ソフトの選定を進めている.機器と解析ソフトをセットで購入した場合,前年度の予算では購入が難しいことが判明している.一段階低周波の機器を購入するということも検討したが,研究のテーマを考えた場合,高周波の機器のほうが適当であるため,今回は購入を見合わせた.今回の支給額と未使用額とを合算して,購入を検討している. 機器の価格についてはその年により変動している.セット料金についても引き続き検討して,支給額内にて購入できるよう調整を進めている.解析ソフトについては,その機能に応じて価格が設定されているため,より少ない価格で購入できるよう,解析ソフトの機能について検討する予定である. その他に掛かる経費については,機器の購入により検討する必要があるため,最終的に機器の価格がどの程度になるかを確認して,適宜配分する予定である.
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