研究課題
末梢から生じた体性感覚情報は一次体性感覚野で処理された後,後頭頂皮質にてさらなる処理が施されることが知られている.近年では,これらの感覚情報処理に関わる皮質領域に対して人為的な刺激を加えることで,触覚機能を変調することができるのではないかと考えられている.前年度は一次体性感覚野に対して人為的な刺激を与えることで触覚機能が変化することを明らかにした.そこで,本年度は陽極経頭蓋パルス電気刺激(anodal tPCS)を用いて,左右の大脳半球にある後頭頂皮質を別々に刺激することで生じる触覚機能の変化を検証した.Anodal tPCSとは頭皮上に貼付した刺激電極から1mA程度の微弱なパルス電流を与えて,電極直下にある皮質領域の神経活動を変調させる刺激方法である.結果として,左右いずれの大脳半球にある後頭頂皮質に対してanodal tPCSを与えても,刺激前後で触覚機能に有意な変化は認められなかった.しかしながら,右大脳半球の後頭頂皮質に対してanodal tPCSを与えたときのみ,刺激によって生じる触覚機能の変化と刺激前の触覚機能の間に有意な相関関係が認められた.つまり,刺激前の触覚機能が低いほど,anodal tPCSを右後頭頂皮質に与えることで触覚機能が向上することが明らかになった.これらの結果から,触覚機能を向上させるうえで重要な役割を担っているのは右大脳半球の後頭頂皮質である可能性が示唆された.
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Behavioural Brain Research
巻: 375 ページ: 112168~112168
https://doi.org/10.1016/j.bbr.2019.112168