研究課題/領域番号 |
18K17695
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
松田 文浩 藤田医科大学, 保健学研究科, 講師 (30646998)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脳卒中 / 片麻痺 / 歩行 / 定量的 / 評価 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,歩行困難な片麻痺者に対して,立位での身体運動を分析し,歩行時に求められる機能を定量的に評価する方法を開発することである.2018年度は,適切な課題と計測方法の策定,および指標値の作成を行った. 計測課題としては,歩行時麻痺側遊脚相に求められる足挙上機能,麻痺側立脚相に求められる体重支持機能を測ることを目的とし,立位において一側ずつ足を挙上させるものとした.また,課題を遂行させる際の教示方法,運動の反復回数,安全性確保の方法,手すりの使用等の条件設定などを策定した.計測方法は,対象者の身体計12カ所にカラーマーカを貼付して上記の課題を行わせ,三次元動作分析装置KinemaTracerを使用して計測することとした. 指標値については,足挙上機能の指標値として,足挙上時の下肢屈曲角度とつま先挙上量,その内訳である下肢短縮量,相対的股関節挙上量など,体重支持機能の指標値として,単脚支持課題における下肢屈曲角度,重心-支持足間の距離などを使用することとした.各指標の健常値を確認するため,男性健常成人10名(年齢28±6歳,身長170.4±4.9cm,体重63.2±5.9kg)を対象に計測を実施した.その結果,足挙上機能の指標値は,膝屈曲角度113.1±3.5度,足背屈角度7.9±9.7度,つま先挙上量46.6±2.9cm,下肢短縮量35.0±4.2cm,相対的股関節挙上量10.5±2.1cm,体重支持機能の指標値は,股屈曲角度-0.1±3.4度,膝屈曲角度3.9±5.0度,重心~支持足間(側方)距離6.3±1.2cmであった.また,これらの値と麻痺側の遊脚機能障害や立脚機能障害を設定した模擬患者の値を比較したところ,設定した機能障害に応じて健常者と異なる値を示した.以上のことから,片麻痺者の歩行阻害因子となる各種機能障害を立位課題の分析から定量的に表せることが示唆された.なお,1回の計測は15分程度で実施可能であり,臨床に応用しやすい方法であることが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度は評価方法と指標値を作成し,歩行可能な脳卒中片麻痺者の計測まで終える予定であったが,計測課題および指標値の作成に予定以上の時間を要したため,脳卒中片麻痺者を対象とした計測が行えず,健常者および模擬患者での検討にとどまった.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は,指標値の妥当性の検討を中心に行う予定である.まず,独力での歩行が可能な脳卒中片麻痺者を対象として計測を行う.2018年度に作成した指標値と,順序尺度による運動麻痺の評価,筋緊張の評価や三次元トレッドミル歩行分析の結果との関係性を検討し,各指標値の妥当性を確認する.その後,独力での歩行が困難であり,かつ歩行能力の改善が予測される亜急性期~回復期の脳卒中片麻痺者に対して定期的な計測を実施し,歩行獲得までの指標値の変化を分析することで臨床における有用性を検証したいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度中に患者データを取得し,統計処理等の分析を行う予定であったが,患者データの取得に至らなかったため,統計ソフトを含めた分析機器の購入を見合わせた.2019年度には患者データを多数取得し,分析を行う予定であるため,2019年度助成金と合わせて統計解析ソフトとデータ分析用PCを準備する.なお,2018年度にカメラセットとともに購入したPCは,患者データの計測に使用するとともに,患者の個人情報を含む多くのデータを記録することになるため,今後,主な計測場所である藤田医科大学病院リハビリテーションセンターに常時設置する.よって,これとは別に統計処理等のデータ分析用PCを準備する.
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