12週間の水中歩行が高齢者の呼吸機能ならびに体幹機能に与える影響について、陸上歩行との比較を追加で研究を実施した。対象者は高齢男性19名とし、ランダムに水中群(9名:年齢69.3±3.9歳)と陸上群(10名:年齢67.1±2.4歳)にわけた。各歩行プログラム開始前に全被験者に対して呼吸機能として肺活量、呼吸筋力(最大吸気口腔内圧:PImax、最大呼気口腔内圧:PEmax)をスパイロメーターおよび口腔内圧計にて計測した。そして体幹機能としてクラウスウエバーテスト変法にて腹筋瞬発力および腹筋持久力を評価した。これら開始前の値をベースライン値(以下BL値)とした。次に、陸上歩行群は平地歩行を、水中歩行群は第4肋間の水深以上となるようにプールに入水し歩行した。運動強度は両群ともに予測最大心拍数(脈拍)の60%になるように歩行速度を調節し、20分間歩行を週に4回かつ12週間実施した。 (結果) 肺活量は両群において歩行前後で変化を認めなかった。両群のPImaxはBL値と比較し3ヶ月後は有意な上昇を認めたが、群間で有意差はなかった。PEmaxは水中歩行群ではBL値と比較し2ヶ月以降に、陸上歩行群では3ヶ月後に有意な上昇を認め、またその値は陸上歩行群と比較し水中歩行群で有意に高値であった。腹筋瞬発力および持久力は水中歩行群ではBL値と比較し2ヶ月以降に、陸上歩行群では3ヶ月後に有意に上昇し、またその値は陸上歩行群と比較し水中歩行群で有意に高値であった。 (考察) 水中歩行では胸郭に水圧がかかっていると思われるが、本研究の運動強度では吸気筋力を陸上よりも上昇させ得るほどの負荷ではない可能性が考えられた。また呼気筋力および体幹機能に関しては、水中歩行群は陸上歩行群よりも有意に上昇した。これは、水中歩行では、水圧に抗しながら前進するため、呼気筋である腹筋群を働かせ体幹を固定していたためと考えられる。
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