発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder:DCD)を有する児における運動主体感と感覚依存特性を調査した。具体的には,DCDを有する児と定型発達児との間で,運動主体感帰属課題と視覚-触覚時間順序判断課題を用いて,運動主体感の時間窓(運動主体感が維持される運動と感覚フィードバックの間の時間間隔)と感覚依存特性(視覚と触覚のどちらに依存傾向があるか)をそれぞれ測定し,比較した。その結果,定型発達児と比較して,DCDを有する児では,運動主体感の時間窓は有意に延長し,有意に強い視覚依存を有していることが明らかになった。加えて,DCDを有する児において,運動主体感の時間窓と抑うつ傾向,視覚依存傾向と微細運動機能との間には,有意な相関関係が存在することが明らかになった。 DCDの診断を有する児一例を対象に,手首への閾値下振動触覚ノイズ刺激によって誘発される確率共鳴現象が微細運動機能,視覚-運動統合機能,感覚依存特性に与える効果について調査した。その結果,確率共鳴を提供していない条件と比較して,確率共鳴を提供している条件において,視覚-運動統合機能の向上,視覚依存傾向の軽減,そして微細運動機能の有意な向上を認めた。続いて,DCDの診断を有する児30名を対象に,確率共鳴が微細運動機能に与える効果について,二重盲検介入研究により調査した。その結果,ベースラインデータおよび確率共鳴を提供していない条件と比較して,確率共鳴を提供している条件において,微細運動機能の有意な改善を認めた。 その他,定型発達児においても視覚への偏りの増加と微細運動機能の低下との間には有意な相関関係があること,若年健常成人と比較して,定型発達学童期児童では運動主体感の時間窓が有意に延長しており,運動主体感の時間窓と微細運動機能との間には有意な相関関係があることを明らかにした。
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