研究課題である「Martin-Gruber吻合(MG吻合)の吻合枝の運動単位数と神経再生への寄与解明」は、遠隔筋由来の活動電位除外に基づく、より正確で定量的な運動単位数推定法(MUNE新法)を用いて、Martin-Gruber吻合における吻合枝の運動単位数と、末梢神経損傷合併例での臨床症状との関連を明らかにすることを目的とする。 1)MUNE新法:令和元年度に、尺骨神経(小指外転筋)MUNEにおける遠隔筋由来の活動電位を除外することで得られる正確で定量的な運動単位数推定の手技を確立した。令和二年度は、MUNE新法を応用して、既存のMUNE市販プログラムに「MUNE新法」を取り入れた「MUNE新法市販プログラム」の開発を、企業・他医療施設と共同研究契約のもと進め、研究使用できるプロトタイプ初版を作成した。令和三年度にプロトタイプver.2が完成したが、令和三年・令和四年度と新型コロナウイルス感染症の影響で検証までは実施できなかった。プログラム実用化の実現は今後の課題とする。 2)MG吻合における吻合枝の運動単位数の計測:令和二年度に、末梢神経損傷合併例でのMUNE新法を用いる運動単位数の計測は、被検筋の高度萎縮例や肘部で尺骨神経神経移行術例では、記録が困難な症例があることが明らかとなった。令和三年度は、MUNEではなく、通常の運動神経伝導検査で得られる複合筋活動電位(CMAP)を活用した吻合枝評価について、MG吻合7名、前骨間神経移行術9名で検討した。MUNE新法同様、CMAP波形をsubtraction解析により得られる吻合枝の振幅は、従来collision法より簡便に、同等の計測が可能であった。令和四年度は本知見について成果発表を行った。 3)成果の発信:令和四年度は、シンポジウムを含む国内学会など3件の発表、1編の英文論文を発表した。
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