研究課題/領域番号 |
18K17702
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研究機関 | 西九州大学 |
研究代表者 |
岸川 由紀 西九州大学, リハビリテーション学部, 講師 (30783360)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 慢性痛 / 痛覚閾値 / ドパミン / 側坐核 / 不動化 / 中脳辺縁系 / 報酬系 |
研究実績の概要 |
慢性痛は、組織損傷を伴う急性痛とは異なり、ストレスや抑うつ状態などの心理的要因が痛みの認知に大きく関与している。本研究では、足関節を不動化したラットを用い、情動の変化に関係する中脳辺縁系ドパミン神経に焦点を当て、慢性痛の心理的要因と痛覚閾値の低下との関連性を調べている。具体的には、①腹側被蓋野のドパミン神経の投射先である側坐核では遺伝子的変化を生じるのか、②腹側被蓋野に影響を及ぼす扁桃体は活性化するのか、①、②で痛覚閾値がどのように変化するのかを調べることで、痛覚閾値低下の神経調節機構を明らかにすることを目的とする。 該当年度は、まず、足関節を固定し不動化したラットにおいて、von Frey filamentの刺激による固定側の足部の痛覚閾値低下が生じることを確認した。また、うつ状態や不安関連行動については、関節固定により軽微なストレス状態ではあるものの過剰なストレス状態でないことが明らかとなった。①について調べるため、足関節不動化ラットの足部に刺激を加えたときの中脳辺縁系ドパミン神経のドパミン放出量をin vivoマイクロダイアリシ法により解析したところ、側坐核における足部の痛み刺激直後のドパミン放出量は関節を固定していないラットと異なる反応を示した。そこで、報酬刺激に対する応答性が変化しているかについて、嗜好性の高い食物を与えた後の側坐核でのドパミン放出量の変化を解析したところ、足関節不動化ラットではドパミンの応答性が消失していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
足関節不動化ラットにおける痛み刺激や報酬に対する中脳辺縁系ドパミン神経のドパミン応答性の変化の原因を解明するため、側坐核にドパミン受容体アゴニストやアンタゴニストを灌流したところ、中脳辺縁系ドパミン神経活性の変化が固定側足部の痛覚閾値の変化に影響を及ぼすことが明らかとなった。そのため、dual-probeマイクロダイアリシス法を用いた中脳辺縁系ドパミン神経活性の解析の研究も推進している。
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今後の研究の推進方策 |
慢性的な痛覚閾値低下における中脳辺縁系神経回路の機能的役割を引き続き検討し、中脳辺縁系ドパミン神経系の反応と痛覚閾値の関係を明らかにする。また、鎮痛に関わるオピオイド受容体についても関与を明らかにしたいと考えている。具体的には、in vivoマイクロダイアリシス法により、ドパミン神経回路の機能調節に関わるドパミン関連シグナルを解析する。また、RT-PCR法を用いて側坐核でのドパミン受容体および鎮痛に関わるオピオイド受容体の発現量を測定する。中脳辺縁系ドパミン神経に影響を及ぼす扁桃体の活動性の関与の解明として、電位依存性ナトリウムチャネルを抑制するテトロドトキシンを扁桃体に注入し、活性化するものとしてChR2ウイルスを用いて発現させてオプトジェネティクスで刺激する。このときのドパミン反応性と痛覚閾値低下に変化があるかを調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において、学会発表可能となるまでの調査が終了しておらず、明確な結論付には至っていないため発表を行わなかった。このため、旅費としての支出がなかった。次年度は、マイクロダイアリシス法による解析に加え、RT-PCR法やオプトジェネティクスを用いた側坐核でのドパミン受容体および鎮痛に関わるオピオイド受容体の遺伝子的変化を測定に用いる物品、および研究成果の学会発表費として使用する。
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