廃用性筋萎縮の予防・病状軽減を目的に筋力トレーニングがよく用いられている。一方、超音波療法は骨折部位の治癒促進などに用いられているが、筋萎縮への効果は不明な点が多い。我々は、この超音波照射にマウスの長趾伸筋より単離した筋細胞から分化誘導した筋管を肥大させる作用があることを見出しており、廃用性筋萎縮の予防に超音波療法も活用できる可能性があると考えている。そこで、培養骨格筋細胞に対する超音波の非温熱効果、特にメカニカルストレスに着目し、①培養骨格筋細胞より分化した筋管に対する超音波照射の肥大化作用の機序の解明と、②超音波照射の筋組織に対するin vivoにおける効果の検証を行うことを目的とした。本年度は、昨年度に残した超音波照射によるメカノシグナリング活性化機構を解析するため、標的分子の発現抑制など遺伝子導入が行いやすいマウス筋芽細胞株C2C12細胞から筋管を作成した。作成した培養筋管に対し、マウスの長趾伸筋より単離し培養した筋管と同様に超音波を照射することで筋肥大効果を調査した(超音波の照射条件:周波数3MHz・強度0.5W/㎝2・照射時間率50%)。その結果、照射24時間後にはC2C12細胞から作成した筋管でも筋肥大が観察された。これまでの結果では、超音波照射の作用点の解析が不十分となっていた。そこで、超音波照射の作用点を顕微鏡上でリアルタイムにてライブイメージングを行うため、顕微鏡上に設置する超音波照射プローブを伊藤超短波と共同で開発した。今後は、超音波照射による作用点と誘導される筋肥大シグナル系を検証していく必要がある。また、上記の解析で見出した作用について、動物モデルの筋組織にて検証していく必要がある。
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