研究課題/領域番号 |
18K17706
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
鎌田 将星 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 理学療法士 (90817701)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 急性期脳卒中 / HAL / 表面筋電図 |
研究実績の概要 |
本研究目的は、急性期脳卒中例を対象にサイボーグ型ロボットであるHybrid Assistive Limbs(HAL)を用いた歩行運動治療を行い、表面筋電図から得られるパラメーター、特にpiper band activityによるリハビリテーションの回復過程での変化、機能転帰を明らかにすることで、効果的な急性期脳卒中リハビリテーション法の確立を目指すことである。 当該年度までに、急性発症脳卒中例のうち発症1週間以内に「歩行に介助を要する」(Functional Ambulation Categories;FAC1-2)ためにリハビリテーション室での歩行練習を開始した中等度以上の下肢運動機能障害例18例を登録した(HAL介入群11例、男性10例、平均年齢65歳)。HAL介入群(HAL20分+理学療法20)、コントロール群(理学療法40分)に割り付け、両群ともに合計10セッション実施した。 登録、全セッション終了時、3ヶ月後に身体機能、認知機能評価を行い、表面筋電図は、全セッション終了時に介助無しで歩行が可能となった13例を対象に測定を実施した。18例中、現時点で17例の3ヶ月後フォローが終了した。中間解析の結果、登録時/3週後/3ヶ月後のFMA(下肢計・運動計・総計)、FIM(運動計・認知計・総計)、FAC、mRS、NIHSS、やる気スコアに両群間で有意差は認めていない。そのため、現時点では、急性期脳卒中例に対するHAL歩行運動治療の効果は示されていないが、これは登録症例数の影響も考えられる。 また、表面筋電図信号の周波数解析において、piper band activityは筋電図測定を実施した全例で検出された。これにより、中等度以上の下肢運動機能障害例を対象としても、piper band activityが検出されることが明らかになった一方、リハビリテーションの回復過程や機能転帰を反映するバイオマーカーとして使用するには適さない可能性が示された。 そのため、現在、表面筋電図より得られるその他のパラメーターを使用した解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初予定していたよりも患者登録に遅れを生じており、急性期脳卒中例に対するHAL歩行運動治療効果を統計解析するにあたり、パワー不足となっている。さらに、piper band activityがリハビリテーション効果を反映するバイオマーカーとなり得ると考えていたが、重度の運動麻痺を呈した下肢運動機能障害例でも検出されたことで、解析対象とするのは困難と考えられたため、新たに表面筋電図より得られるその他のパラメーターを用いて追加解析を行うように変更した。
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今後の研究の推進方策 |
患者登録が遅れている問題点として、①台風や地震などの自然災害や病院移転、新型コロナウィルスなどの影響により、研究計画前と比べて病院機能が縮小していることによる入院患者数の減少、②r-tPAや血管内治療などの急性期治療の進歩による脳卒中例の軽症化、③高齢患者の増加により、発症前より運動機能障害や認知機能障害を有しているなどが考えられるため、研究期間の延長を申請し、引き継ぎ症例登録を進めている。また、表面筋電図の問題点として、中間解析の結果より、piper band activityがリハビリテーションの回復過程を十分に捉えられない可能性が明らかとなった。そのため、本年度は、表面筋電図測定におけるpiper band activityの検出を行いつつ、その間のパラメーターについても解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
患者登録に遅れが生じたため、当初予定していた表面筋電図の測定ならびに解析が十分に遂行されずに余剰しました。 来年度より、筋電図解析や統計解析のために使用計画をを再検討します。
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