本研究目的は、急性期脳卒中例を対象にサイボーグ型ロボットであるHybrid Assistive Limbs (HAL)を用いた歩行運動治療を行い、表面筋電図から得られるパラメーター、特にpiper band activityの有無によるリハビリテーションの回復過程や機能転帰の違いを明らかにすることで、効果的な急性期脳卒中リハビリテーション法の確立を目指すことである。令和2年度までに、急性期脳卒中例のうち発症1週間以内に「歩行に介助を要する」(Functional Ambulation Categories;FAC1-2)ためにリハビリテーション室での歩行練習を開始した中等度以上の下肢運動機能障害(Fugl-Meyer Assessment下肢計;FMA<20)を呈した24例を登録した(HAL介入群15例、男性13例、平均年齢63.7歳)。HAL介入群(HAL20分+通常理学療法20分)、コントロール群(通常理学療法40分)に割り付け、両群ともに合計10セッション実施した。登録時、10セッション終了時、発症3ヶ月後に身体機能、認知機能評価を行い、表面筋電図は、10セッション終了時に介助無しで歩行が可能となった13例を対象に計測を実施した(HAL介入群9例)。単変量解析の結果、登録時/10セッション終了時/発症3ヶ月後の各評価項目において、両群間に有意差を認めなかった。また、表面筋電図信号の周波数解析において、piper band activityは筋電図測定を実施した中等度以上の下肢運動機能障害13例では、全例で検出が確認された。これらより、本研究にて、HALを用いた歩行運動治療の有効性を確認することができず、さらに、我々が注目したpiper band activityは、リハビリテーションの回復過程や機能転帰を反映するバイオマーカーになり得ない可能性がある。
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